会長声明

2011/04/11

取調べ全過程の可視化の一段の促進を求める会長声明

2011年(平成23年)4月11日
第二東京弁護士会会長 澤井 英久
11(声)第2号

 本年3月31日、法務大臣の私的諮問機関である「検察の在り方検討会議」がその検討結果として「検察の再生に向けて」と題する提言を発表し、4月8日には、江田法務大臣が検事総長に対し「検察の再生に向けての取組」を指示した。
 検討会議提言においては、検察のさまざまな組織的課題、検察官の倫理や教育の課題について一定の提言がなされているほか、取調べの可視化については、特捜部事件についてできる限り広範囲の録音・録画の試行を行なうよう努め、1年後を目途として検証のうえ検証結果を公表すべきこと、制度としての取調べ可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため、直ちに検討の場を設けることなどが提言されている。しかしながら、弁護士会が強く求めていた取調べ全過程の録画については、未だ試行と検討の提言にとどまり、制度化への明確な道筋を示すには至らなかったことは残念である。
 自白や供述調書に過度に依存した捜査及び公判に起因して、無罪判決(再審を含む)が相次いでいること、大阪地検特捜部での証拠物改ざんや取調べ過程の問題性が明らかになっている今、取調べ全過程の録画は、もはや先送りを許さない喫緊の課題である。今後設けられる新たな刑事司法制度の検討の場においては、取調べの可視化だけでなく他のさまざまな制度上及び運用上の課題が検討される可能性があるが、「総合的検討」「十分な検討」の名の下に、取調べ全過程録画導入の検討や結論が先送りされることがあってはならない。
 また、取調べの可視化は、検察のみならず警察も含めた捜査機関全体に求められる課題である。本年4月7日に国家公安委員長の有識者研究会中間報告が発表されたが、その中で取調べの可視化の是非については問題点の指摘にとどまった点は、遺憾である。
 弁護士会は、一貫して、取調べの全過程の録画を主張してきた。取調べの一部だけの録画では、取調べ過程の適正化の観点からは全く意味がなく、あくまで全過程の可視化が課題であること改めて強調したい。
 法務大臣が4月8日の取組指示において、検討会議提言を踏まえ、原則として取調べ可視化の試行指針上対象となりうる全事件において試行を行うこと、取調べ全過程の録音・録画を含めて試行の対象とすること等を明確に指示したことについては、提言からわずかではあるが踏み込んだものとして評価できる。
 当会は、警察、検察を含めた取調べ全過程の録画の制度化を引き続き求めるとともに、検察官手持ち証拠の保全及び開示の徹底など捜査過程の適正化のために、新たな検討の場での議論を注視する。また、違法・不当な捜査を見逃さないよう、捜査段階での弁護人の弁護活動の充実の徹底のための方策を講じていく所存である。

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