会長声明

2002/09/20

死刑執行に関する声明

2002年(平成14年)9月19日
 第二東京弁護士会 会長 井元 義久

  1.  昨日、名古屋拘置所において浜田美輝死刑確定囚に対し、また福岡拘置所において春田(旧姓・田本)竜也死刑確定囚に対し、死刑の執行が行われた。誠に遺憾な事態と言わざるを得ない。
  2.  国際社会は死刑の廃止に向かう潮流のなかにある。
     2002年1月現在、死刑の存置国・地域が84なのに対し、廃止国・地域はヨーロッパを中心に111と大きく上回るに至っている。ロシアも現在死刑の執行を停止しているばかりか、死刑廃止ないし死刑執行停止の流れはアジアにもおよび、韓国も死刑の執行を停止し、台湾も2004年までに死刑を廃止する計画をたてている。
     国連においても、1989年、国連総会においていわゆる「死刑廃止条約」が採択され、また国際人権(自由権)規約委員会は、1993年及び1998年の2回にわたり、日本政府に対し、死刑廃止に向けた措置をとるように勧告している。
     欧州評議会もまた、2001年6月、日本とアメリカに対し、死刑執行の一時停止を行い、早急に死刑制度を廃止するように促す旨の決議を採択している。
     また,日本弁護士連合会は,1997年,死刑囚が国際人権自由権規約等に違反している状態におかれていることに鑑み,死刑の執行は差し控えるべきである旨の要望書を提出し,死刑廃止後の最高刑の在り方,死刑執行停止法案についての検討を重ねてきた。当会においても,この間,同様に,死刑制度の問題点につき調査検討を重ねてきたところである。
  3.  他方、我が国では、1983年免田事件・84年財田川事件・同年松山事件・89年島田事件につき、再審無罪判決がなされ、死刑確定判決についても誤判が存在したことが明らかとなった。
     日弁連は1997年、死刑に直面する者に対する権利保障の状態が、国際人権(自由権)規約、国連決議等に違反して違法状態にあることに鑑み、これらの違法状態が解消されるまで、死刑執行は差し控えるべきであるとの要望を行っているが、死刑事件についての誤判のおそれは、現在も存在したままである。
     このような状況のもとで、我が国においても、死刑の廃止をめぐる議論が活発に行われるようになり、2002年5月には、欧州評議会議員会議法務人権委員会と「死刑廃止を推進する議員連盟」(死刑廃止議員連盟)の共催により、死刑廃止に向けた司法人権セミナーが開催され、また日弁連は現在、死刑廃止議員連盟との間で、意見交換会を重ねている。
     このように我が国も、死刑廃止に向かう国際社会の潮流のなかに存在している。
  4.  当会は、法務大臣に対し、死刑の執行のなされる度、死刑の執行を停止するよう要望してきたが、このような死刑をめぐる国際的潮流を踏まえ、死刑存廃に関する国民的議論が尽くされるまで、死刑の執行を停止するよう、重ねて要望するものである。

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