会長声明

2004/10/25

司法修習の給費制廃止に関する会長声明

2004年(平成16年)10月25日
第二東京弁護士会 会長 山田勝利

 司法修習の給費制を廃止する裁判所法の一部を改正する法律案が第161回臨時国会に提出された。同法律案の提案理由には、「新たな法曹養成制度の整備の一環として、司法修習生に対し給与を支給する制度に代えて、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が貸与する制度を導入する必要がある」とあるが、司法修習の給費制を廃止する理由は何も触れられていない。
 給費制を貸与制に代えるとすれば、法曹を志す者は、法科大学院の学費の負担に加えて、修習期間の資金をも負担することとなり、有為の人材が法曹への道を経済的理由から断念せざるを得なくなる虞がある。また、弁護士となった後も、修習資金の返済のために、報酬を顧みることなく人権擁護に携わる等の公益活動を果たし得なくなるという悪影響を生み出しかねない。

 いわゆる新司法修習においては、法科大学院教育に屋上屋を重ねるものとの危惧を払拭するためにも、法科大学院におけるクリニックやエクスターンシップ等の実務教育を前提として、司法修習生に一定の権限を与え、まさしく研修法曹として生の事実を取り扱わせるべきである。それにより、法科大学院、司法試験、司法修習は有機的一体のものとして位置付けられるのであり、また司法修習生に一定の権限を与えることによって給費制は継続の意義を持つものとなるのである。

 司法修習の給費制を廃止する裁判所法の一部を改正する法律案は、人権感覚に富み、真に国民の役に立つ法曹を養成するという視点を忘れ、司法修習の内容を吟味することなく、給費制の廃止を「新たな法曹養成制度の整備の一環」と位置づけているところに根本的な誤りがある。整備されるべきは、司法修習生に一定の権限を与えることであり、給費制の廃止ではない。給費制廃止には弊害はあっても、合理的理由は存しない。

 ここに当会は、新たな法曹養成制度においては、司法修習自体の内容の吟味・整備こそが必要であり、第161回臨時国会に提出されている裁判所法の一部を改正する法律案に反対するとともに、司法修習の給費制の維持を求めるものである。

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