会長声明

2005/10/11

共謀罪の新設に反対する会長声明

2005(平成17)年10月11日
第二東京弁護士会 会長 高木 佳子

 政府は、いわゆる共謀罪に関する法案(「法案」)を、今特別国会において審議する予定で進めていることが報道されています。この法案は、解散前の通常国会において提案され廃案となったものとほぼ同じ内容であり、憲法の定める法定手続の保障の原則、罪刑法定主義に抵触するおそれの高いものと言えます。

 共謀罪は、犯罪の実行着手前の合意それ自体を処罰の対象とし、実行行為の着手に至らなくても、また予備行為がなくても、独立して犯罪とする点に最大の問題があります。

 すなわち、共謀だけで、一定の実行行為や予備行為がなくても犯罪とされることは、共謀の概念が不明確であることも相俟って、人の内心を処罰することと紙一重であり、わが国の刑事法制の基本原則と両立しないものです。

 共謀罪は、もともと、国際的な組織犯罪を防止するための国連条約を批准する目的で、テロ防止のため国境を越える犯罪、組織犯罪を防止するために提案された法案です。しかし、当初の目的とは異なり、法案には行為の越境性や組織犯罪集団の関与は要件とされていません。これでは、国連条約の想定する範囲を超えて、一般市民や企業団体、法律家グループ、労働団体などの活動に対しても共謀罪の取り締まりが広範囲に及ぶ危険があります。

 また、法案には、共謀罪の新設だけでなく、証人威迫罪、偽証罪の前段階で取り締まる証人買収罪の新設や、サイバー犯罪条約関連の規定において、あるコンピューターに対する差押許可状のみで回線により接続されている別のコンピューターのデータも差押可能とするリモートアクセスによる差押えが定められる等、数多くの問題点があります。

 政府は、国連条約審議の段階において共謀の犯罪化はわが国の刑事法制の基本原則と相容れないことを明らかにしておりました。また、先の通常国会においても与野党議員から問題点を指摘する質問があったところであり、当会は、このように必要な要件が定められていないため概念や範囲が不明確で、運用における濫用が予測されるような多くの問題点を抱える共謀罪の新設に強く反対するものです。

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