会長声明

2006/05/09

金融商品取引法案(証券取引法の一部を改正する法律案等)に対する会長声明

2006(平成18)年5月9日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 政府は、2006年3月13日、「金融商品取引法案」(「証券取引法等の一部を改正する法律案」、「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」)を国会に提出しました。

 この法案は、現在の縦割り業法を見直し、幅広い金融商品について包括的・横断的な規制を設け、消費者保護を拡充することを目的とするもので、当会が日弁連とともに求めてきた金融商品規制の方向と機を一にするものです。しかしながら、同法律案には、次のような看過しがたい問題点や不十分な点があると言わざるを得ず、今回の改正を消費者保護の見地からより適切なものにするため、次のような修正を強く求めます。

1 法案に、すべての金融商品について不招請勧誘(取引を希望していない顧客に対する勧誘)を原則として禁止する規定を入れること。少なくとも、勧誘被害が極めて多い商品先物取引については商品取引法に不招請勧誘を禁止する規定を入れること。

 法案では、政令で指定する特定の金融商品に限って不招請勧誘を禁止しており(38条本文、3号)、被害件数・被害額ともに多い商品先物取引に至っては、金融商品の定義からすら外されていて(2条24項4号)、不招請勧誘が禁止される余地がありません。もともと金融商品による消費者被害は、電話や訪問による勧誘が発端であることが多いことから、不招請勧誘禁止は、英米欧諸国では既に定着した制度になっています。
とりわけ日本においては、団塊の世代が定年退職し、退職金を持つようになる今後の社会を見据え、高齢者の多額の投資被害を未然に防止するためにも、被害の発端となる不招請勧誘をすべての金融商品について原則禁止とすべきです。

2 法案214条の2を削除し、商品先物取引には損失補てん禁止・事故確認の制度(業者の申請に基づき主務大臣が事故として確認した場合のみ損害賠償してよいとする制度)を設けないこと。

 法案では、商品先物取引について新たに損失補てん禁止・事故確認制度の規定が追加されることとなっています(商品取引所改正法案214条の2)。この改正案は、従来の証券取引法にあった損失補てん禁止・事故確認制度をそのまま持ってきたものです。
 しかし、そもそも証券取引法がこの制度を設けたのは、平成3年の証券不祥事で、大口顧客にのみ損失を補填してその後の取引の継続を誘引とするという不公平な扱いが発覚したことによるもので、商品先物取引にはそのような立法事実はありません。逆に、商品先物取引においては、弁護士や消費生活センターが間に入り、示談によって被害の回復をめざすケースが相当の割合を占めているところ、この規定を口実に示談解決を拒否され、訴訟をする条件の整わない人たちが泣き寝入りをするという不当な結果になることが十分予測されます。現実に証券取引法に損失補てん禁止・事故確認制度が入った後、それが障害となって被害回復をあきらめる被害者が続出したことからも、このような結果は容易に推測できます。

 以上の理由から、当会は上記のような法案の修正を強く求めるものです。

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