会長声明

2006/05/22

「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律案」の参議院での審議入りに対する会長声明

2006(平成18)年5月22日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案(いわゆる未決拘禁法案)」について、23日から参議院法務委員会で質疑がはじまる予定になっています。

 本法案では、条文上も、また、代替収容された被収容者の食糧費などを法務省予算から支弁する、いわゆる費用償還法が存続することとなったことからも、留置施設の代用性は維持されています。また、衆議院法務委員会での審議においても、本法案が代用監獄制度を永続化・恒久化するものではないことが政府委員の答弁で確認されています。しかしながら、本法案自体は、代用監獄の廃止・漸減の方向性を示すものにはなっておらず、代用監獄の廃止を長年にわたって要求してきた当会としては、まことに残念であるといわざるをえません。

 法務省・警察庁は捜査を迅速・適正に遂行する上で必要であるとか、被勾留被疑者のほとんど(98%)を留置施設に収容している現状では、代用監獄の漸減は非現実的であり、捜査部門と拘禁部門とを分離した1980年以降は代用監獄の弊害はなくなったと主張しています。しかし、被勾留被疑者のほとんどを収容するようになったのは、むしろ「拘置所の収容能力の増強に努めて、代用監獄に収容される例を漸次少なくする」との1980年法制審議会の答申を尊重せず、捜査の便宜を優先させてきた実務の結果であり、また、1980年以降も虚偽の自白を強要されたことが判明して裁判で無罪になった事例や深刻な人権侵害の訴えがなくならないことは、われわれがよく知るところです。

 衆議院における審議では、代用監獄の弊害がなくなっていないことのほかにも、弁護人と被疑者との接見を一時停止することを可能とする規定の新設が、ほとんど希有な事例を前提としていることなどの問題点が明らかにされましたが、衆議院では、代用監獄を漸減する方向性を附則に盛り込むことができず、また、弁護人の接見の一時停止措置の削除もされなかったことは、まことに残念でした。

 当会は、日本弁護士連合会とともに、23日から始まる予定の参議院での審議を通じて、代用監獄を漸減すべきことを附則に盛り込むこと、弁護人の接見交通権を侵害する接見の一時停止措置を削除すべきことなどを求め、本法案のより一層の充実を期し、代用監獄の廃止・漸減に道筋をつけるよう、総力を挙げて取り組みます。

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