会長声明

2006/09/07

金融庁の貸金業規制法「改正」原案に反対する緊急会長声明

2006(平成18年)年9月7日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

  1. 貸金業制度の改革と、出資法の上限金利の見直しを検討していた金融庁と法務省は、9月5日、貸金業規制法改正の原案となる検討内容を、自由民主党金融調査会貸金業制度等に関する小委員会で明らかにした。
     この「改正」原案は、貸金業への参入規制や金融庁の監督権限の強化を盛り込んではいるものの、最大の問題である貸付金利については、
    1. 利息制限法の金利区分を変え、一部の借入額については従来より金利を引き上げる
    2. 最大9年間という長期にわたる「グレーゾーン金利」の存続を認める
    3. 少額・短期の融資に、年利28%という「特例高金利」を新たに導入する
    ことを提案している。
  2. そもそも今回の法改正は、多くの消費者金融業者が「グレーゾーン金利」で融資し、その重い返済負担が多重債務者を生む原因となっていることから、出資法の上限金利を引き下げ、「グレーゾーン金利」をなくして利息制限法の潜脱をなくすことが制度改革の柱だったはずである。ところが、今回の「改正」原案は、次に述べるとおり、本来の目的と方向性に逆行し、貸金業制度を改革するどころか逆に改悪するものとなっており、到底容認することができない。
     まず、今回の「改正」原案によると、少額・短期の借入をしている多くの一般国民にとって、金利引上げの結果を招来する危険性が高い。次に、「グレーゾーン金利」が、経過措置終了後の「見直し」によって、逆に恒久化される危険がある。更に、従来は返還請求できた支払済みの超過利息が、「超過分の利息支払いは義務ではない」ことが契約書に明記されることで「任意の支払い」とみなされ、逆に返還請求できなくなり、法的な救済の途が閉ざされてしまう危険があるのである。
  3. 今日、個人破産申立件数は年間20万件を超え、潜在的な多重債務者は200万人に及ぶと言われている。経済的理由による自殺者は年間約8000名に上り、多重債務問題は、重大な社会問題とされ、その背景にある消費者金融業者の高金利を規制する努力が積み重ねられてきた。最高裁判所も、本年1月13日以降、貸金業規制法43条(グレーゾーン金利)の適用を否定して、債務者救済を図る判決を相次いで示した。
     金融庁は、本年1月の最高裁判決に対し、「重く受け止める」とのコメントを述べ、その後の「貸金業制度に関する懇談会」でも、一連の最高裁判決を尊重し、「グレーゾーン金利」を撤廃することを確認してきた経緯がある。
     今回、金融庁が提出した貸金業規制法「改正原案」は、これら行政や司法の、多重債務問題解決に向けた様々な努力を無にすると同時に、高金利の引き下げを求める広範な国民の期待を裏切るものであって、容認することができない。
  4. 当会は、日本弁護士連合会とともに、多重債務問題の根本的な解決のため、例外なき金利引き下げ、「グレーゾーン金利」の撤廃、「みなし」弁済規定の撤廃を、重ねて強く求めるものである。

もどる