会長声明

2006/12/19

新教育基本法の成立にあたっての声明

2006年(平成18年)12月19日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 去る12月15日、教育基本法「全部改正」案が参議院を通過し、新教育基本法が成立した。当会は、同法案の衆議院通過にあたり、十分な審議を尽くさずになされた衆議院での強行採決に抗議するとともに、参議院における審議においては、慎重な審議を尽くし、現在の法案には大きな問題があるので廃案とされることを強く要望してきた。しかるに、子どもたちのいじめを苦にした自殺が広がるなどの問題、単位未履修問題、政府主催のタウンミーティングでの「やらせ・さくら問題」など、論議を深めるべき問題が新たに発生したにもかかわらず、参議院においても、十分な審議が行われることなく、問題点が何ら解消されないまま、成立に至ったことは大変遺憾である。

 当会が本年10月11日付「教育基本法の『全部改正』案についての緊急意見書」において詳しく指摘したとおり、新教育基本法には、時の政治権力が、教育内容を統制して教育現場の自主性・自律性を奪うことにつながりかねないこと、そして、内心に関わる事柄を「教育の目標」に定めることにより、内心の自由(憲法第19条)に抵触するおそれがある、などの問題がある。
 しかし、旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決(1976年5月21日)がかつて判示したように、教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されなければならない。また、愛国心等内心の強制につながる教育行政が行われるならば、それは憲法第19条に抵触するといわなければならない。
 これは、新教育基本法が成立しても変わらない法理である。

 当会は、新教育基本法の運用にあたり、時の政治権力による「不当な支配」による教育内容の統制や、内心の強制につながる教育行政が行われるおそれがないように政府に強く申し入れるとともに、適正な運用がなされるよう厳重な監視を行っていきたい。

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