会長声明

2008/02/01

死刑執行に関する会長声明

2008年(平成20年)2月1日
第二東京弁護士会 会長 吉成 昌之

 本日、東京拘置所、大阪拘置所及び福岡拘置所において各1名、合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。昨年は4月、8月、12月に各3名の死刑確定者に対して死刑が執行されており、それからわずか2ヶ月足らずのうちに更に3名に対し死刑が執行されたものであって、連続した大量の死刑執行であり、誠に遺憾である。
 死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。このような状況の下で、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し、2007年12月24日現在、死刑存置国62か国、死刑廃止国135か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。
 また、昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、わが国の死刑制度の問題が端的に示された上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告され、さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。
 わが国の死刑制度については、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)の再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点については、抜本的な改善が図られておらず、誤判の危険性は依然不可避である。また、死刑と無期の量刑について明確な判断基準が存在せず、量刑判断についての誤判のおそれも指摘されている。重罰化の傾向も顕著であり、全国の裁判所で昨年1年間に死刑判決の言い渡された数は47人に上り、一昨年の44人が最高裁の記録で確認できる1980年以降ではそれまでの最多であったことから、二年連続で死刑判決の言い渡し数が更新されたことになる。このような重罰化のなかで、死刑確定者の数は100名を超えており、大量の死刑執行が危惧されるなか、今回の死刑執行がなされたものである。
 日本弁護士連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。また当会は、本年1月17日、シンポジウム「死刑制度の現状と終身刑の是非」を開催した。今、わが国に求められているのは、死刑の執行を急ぐことではなく、いかにして死刑判決の言い渡し数を減らし、死刑の執行を停止させるかなのであって、そのためには死刑に代わる刑罰としての終身刑の是非を含め開かれた継続的な議論を行うことである。 とくに近い将来裁判員制度による裁判が始まろうとする今日において、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くすことは極めて重要な課題である。
 当会は、政府に対し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、強く要請するものである。

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