会長声明

2008/03/24

プリンスホテルによる日教組集会会場使用拒否についての会長声明

2008年(平成20年)3月24日
第二東京弁護士会 会長 吉成 昌之

 本年2月2日から開催が予定されていた日本教職員組合(以下「日教組」)教育研究全国集会全体集会(以下「全体集会」)の会場を、グランドプリンスホテル新高輪(以下「プリンスホテル」)が契約に違反して使用拒否をした件について、昨年12月26日、東京地方裁判所は会場使用を拒否してはならないとの仮処分決定を行い、東京高等裁判所もプリンスホテルの抗告を棄却した。
 にもかかわらず、プリンスホテルは、裁判所の決定に従わず、全体集会は前例を見ない中止という事態に追い込まれた。
 憲法21条1項によって保障される集会の自由は、意見や情報等の伝達や交流に資する重要な基本的人権として、私人間においても最大限尊重されなければならない。「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第21条も平和的集会の権利を保障している。企業のコンプライアンス(法令遵守)の内容としても、集会の自由という憲法上の権利を尊重することが求められることは当然である。プリンスホテルが、裁判所の決定をも無視して、会場使用を認めなかったことは、司法によって紛争を解決するという社会的ルールを無視し、法の支配を揺るがす事態を生じさせるものであるといわざるを得ない。
 プリンスホテルは、街宣活動によって周辺住民等に迷惑が生じることなどを拒否の理由としてあげているが、東京高裁が「警察当局と十分な打合せをすることによってそのような混乱等は防止できる」と指摘するとおり、会場使用の拒絶を正当化する理由にはなりえない。集会会場の使用拒否が不当な圧力に屈する形でなされれば、「抗議が予想されるから」などの理由で、同様の集会の開催が困難となる事態を招き、憲法21条の精神は根底から覆されることになる。
 当会は、法の支配を無視したプリンスホテルの会場使用拒否が極めて遺憾である旨を表明するとともに、集会会場を提供する企業等に対し、集会の自由という基本的人権を尊重し、その社会的責任を自覚して、今後二度とこのような事態を引き起こさないよう強く要請するものである。

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