会長声明

2008/03/31

全国学力調査を2007年と同様に実施することに反対する会長声明

2008年(平成20年)3月31日
第二東京弁護士会 会長 吉成 昌之

1.  文部科学省は、2007年4月24日、小学校第6学年、中学校第3学年の全児童生徒を対象として、全国学力・学習状況調査(以下、「全国学力調査」という。)を実施し、同年10月24日、調査結果を、国全体と都道府県に分けて公表するとともに、同じころ、各都道府県教育委員会、各市町村教育委員会、各学校に対し、調査結果を提供した。文部科学省は、都道府県教育委員会・市町村教育委員会に対しては、個々の市町村名、学校名等を明らかにした公表を行わないよう求めたが、各市町村教育委員会や学校が自ら結果公表するか否かについては、それぞれの判断に委ねた。
 そして、文部科学省は、同調査を毎年継続して、原則として4月の第4火曜日に実施するものとし、2008年は4月22日に実施することを決定している。

2.

  しかし、文部科学省がいわゆる悉皆調査として2007年4月に実施し、かつ、2008年以降も毎年継続的に実施しようとしている全国学力調査は、上記のような結果の公表、公開と毎年実施の継続性等を前提とした場合、旭川学力テスト事件1976年5月21日最高裁大法廷判決が判決理由中において表明した懸念(「・・・調査の実施によって、・・・中学校内の各クラス間、各中学校間、更には市町村又は都道府県間における試験成績の比較が行われ、それがはねかえってこれらのものの間の成績競争の風潮を生み、教育上必ずしも好ましくない状況をもたらす」おそれがあること)を顕在化し、学校教育現場における成績重視の風潮、過度な競争を招来し、教師の自由で創造的な教育活動を妨げ、文部科学大臣の教育に対する「不当な支配」(教育基本法16条1項)を招きかねないものでる。
 また、2007年4月に実施した学力調査においては、現に点数を上げるために障害のある子どもを受験させないという、障害のある子どもを地域の学校から排除し、差別を招来するような明らかな権利侵害事例の発生が報告されている。にもかかわらず、2008年以降も同様の全国学力調査を実施することは、子どもたち全体が学校現場における過度の競争にさらされ、継続的な肉体的・精神的負荷を抱え込み、全人格的な発達を阻害されるばかりか、障害のある子どもは差別を受けるなど、一人ひとりの個性に応じた弾力的な教育を受ける権利を侵害するおそれが大きい。

3.

 そこで、当会は、全国学力調査を、2008年以降も2007年と同様の方法により、いわゆる悉皆調査として継続実施することに反対し、学力調査の方法について、調査対象とする学校及び児童生徒を無作為に抽出する方法によるいわゆるサンプル調査とし、調査結果の公表、公開のあり方にも慎重な検討を加えるなど、上記指摘の諸問題が解消されるよう求めるものである。

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