会長声明

2009/05/21

裁判員裁判、拡大された被疑者国選弁護の開始にあたっての会長声明

2009年(平成21年)5月21日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 1号

 本日、裁判員法が施行され、一般市民が審理に参加する裁判員裁判が殺人罪等の重大事件で開始されることとなった。また、被疑者国選弁護制度の本格的実施が始まり、弁護人を依頼する資力のない起訴前の被疑者に国選弁護人の付される制度が、全面的に拡大されることとなった。加えて、改正検察審査会法が本日施行され、検察官の不起訴処分について一般市民で構成される検察審査会が起訴相当と議決した場合、2回目の議決に拘束力が生じることとされた。この制度も、裁判員裁判とならび国民の司法参加を保障する制度として機能することとなる。
 これまで、わが国の刑事裁判は、捜査官が密室において作成した供述調書に依拠して行われてきた。そして、起訴されれば実に99パーセント以上の確率で有罪判決がなされてきたのである。日弁連および弁護士会は、これまで、一貫して警察の見込み捜査や自白を強要する違法・不当な取調べ等によってえん罪が生まれてきたことを指摘してきた。そして、身体拘束された被疑者の要請に応じ弁護士会の負担で当番弁護士を派遣し必要な弁護活動を行ってきたが、起訴前後を通じた十分な弁護を提供できない場合も少なくなかった。
 しかしながら、本日より、検察官や裁判官のみの判断で運用されてきた起訴や裁判に対し市民の常識が反映されることになる。裁判員裁判では、供述調書に依拠した裁判ではなく、裁判員の参加した法廷で直接やりとりされる証言・供述を重視した裁判に変わることになる。
 わが国の刑事司法は今日から大きく変わる。この刑事司法改革は、日本国憲法の国民主権の原理に由来するものであり、手続に対する透明性や市民の信頼を高め、わが国刑事司法の民主的基盤をより強固にするものである。もちろん、違法・不当な取調べを一掃するためには、被疑者国選弁護の実施のみでは不十分であり、取調べの全面可視化や取調べに弁護人の立会いを認める措置も必要である。当会は、政府に対し、取調べの全面的な可視化等を実現するため、早急な関係諸法制の整備を要望する。
 当会は、裁判員裁判を初めとする新しい刑事司法制度の実施にあたり、これに万全を期して対応するとともに、さらなる刑事司法の改革に向けて今後も力を尽くす決意を表明するものである。

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