会長声明

2009/06/04

労働者派遣法の抜本改正を求める会長声明

2009年(平成21年)6月4日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 3号

 昨年秋以降、米国の金融危機に端を発する世界同時不況が一層深刻な状態になり、これとともに非正規労働者の雇用情勢が一段と悪化してきた。とりわけ派遣労働者について、1985年成立の労働者派遣法は派遣対象業種を専門性の高い業務に限定していたが、その後のグローバリズム、規制緩和の潮流のもと、1999年にそれが原則自由化され、また、2003年には製造業への派遣も解禁されるところとなった。このような法改正によって、非正規労働者は、現在の景気悪化の影響を直接受け、その雇用が安易に打ち切られることとなったものである。
 大量の非正規労働者が職を失い日々の暮らしさえも危殆に瀕する状況にある現在、国は、基本的人権としての生存権(憲法第25条)と勤労の権利(憲法第27条)とを現実的な権利として国民に保障すべく、また、社会政策上、正規労働者と非正規労働者との間に「同一労働・同一賃金」の理念を実現すべく、これらにその政策的努力を傾注すべきである。
 政府が2008年11月に国会に上程した労働者派遣法の一部改正法案は、派遣対象業種に限定を加えることをせず、また、登録型派遣(仕事のあるときだけ雇用される派遣形態)をも容認するものとしているため、非正規労働者の雇用を維持し、その生活を安定させる方策としては全く不十分なものとなっている。
 労働者派遣法の改正に当たっては、派遣対象業種を専門的なものに限定して派遣が雇用の例外的な形態であることを明らかとし、また、登録型派遣、日雇い派遣を全面的に禁止し、雇用と生活の安定を図るべきである。そして、雇用の原則形態はあくまでも直接雇用であると位置づけ、派遣可能期間経過後の派遣は直接雇用に移行する旨のみなし規定を設け、さらに、派遣料金のマージン率にも上限を設定して派遣労働者の低賃金を是正するなどの抜本的な方策をとるべきである。
 日弁連は、本年5月29日の定期総会において、「人間らしい労働と生活を保障するセーフティネットの構築を目指す宣言」を採択した。
 当会は、日弁連の上記宣言の趣旨を踏まえ、非正規労働者の雇用の維持、その権利擁護のため、前述した当会の主張を反映させた労働者派遣法の抜本改正を求めるものである。

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