会長声明

2009/10/02

改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明

2009年(平成21年)10月2日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 6号

 わが国は、先進国でも例を見ない深刻な多重債務問題を、長年の間、抜本的な解決をすることなく放置してきた。
 2006年12月に至り、政府は漸く、高金利、過剰融資、過酷な取り立て等の問題に対処すべく改正貸金業法を国会に提出し、これを成立させた。同法には、貸付限度額の総量規制、上限金利の引き下げ、取り立て規制の強化、ヤミ金融への罰則強化等が盛り込まれ、以後、段階的に施行されてきたものである。そして、来年6月に向け、改正法の要である上限金利の引下げ、総量規制などを含む同法の完全施行が予定されているところ、その可及的速やかな施行が望まれる。
 ところが、近時、消費者金融の成約率低下、経済危機による一部商工ローン業者の倒産により、資金調達が困難となった中小企業者の倒産の増加などを殊更強調し、改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める動きがある。
 しかしながら、改正貸金業法の完全施行の先延ばし、金利規制等の緩和は、断じて許すべきではない。多重債務問題の元凶が、高金利と過剰融資にあることは、公知の事実である。1990年代のバブル崩壊後の経済危機の際、貸金業者に対する不十分な規制の下に商工ローンや消費者金融が大幅に貸付を伸ばした結果、1998年には自己破産者が10万人を突破し、年間自殺者が11年連続3万人を超えるなど、多重債務問題が更に深刻化した歴史を看過すべきでない。
 今、多重債務者のために必要とされる施策は、改正貸金業法の施行の先延ばしではなく、相談体制の拡充・強化、セーフティネット貸付の更なる充実及びヤミ金融の撲滅などを実現することである。改正貸金業法成立後、政府は多重債務対策本部を設置し、多重債務問題改善プログラムを策定した。当会も、法律相談担当弁護士の研修、自治体主催の多重債務相談への弁護士の派遣、自治体との連携による多重債務専門相談の受け皿体制の構築等により、この問題に取り組んできた。このような官民が連携した多重債務対策の取り組みは、着実にその成果を上げつつあるところである。
 当会は、多重債務問題が喫緊の課題であることを踏まえ、国に対し、以下の施策を求める。

  1. 改正貸金業法を早期(遅くとも本年12月まで)に完全施行すること。
  2. 自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
  3. 個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
  4. ヤミ金融を徹底的に摘発すること。

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