会長声明

2009/10/26

民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明

2009年(平成21年)10月26日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 7号

 選択的夫婦別姓や非嫡出子の相続差別撤廃を盛り込んだ民法改正案は、平成8年に法務大臣の諮問機関である法制審議会総会が決定、答申しているにもかかわらず、現在にいたるも法律改正が実現していない。しかし、家族法部分に関する民法改正はいまや喫緊の課題である。
 夫婦同姓の原則により、96%の夫婦が夫の氏を選ぶ現状のもと、改姓を余儀なくされる女性は、職業上・社会生活上様々な不利益を被っている。価値観が多様化する中、婚姻後も自己のアイデンティティとして認知されてきた氏を継続して使用する権利は、氏名が人格権の一内容を構成する(最判昭和63年2月16日)ことに鑑み、法制度上も十分尊重されなければならない。そもそも、選択的夫婦別姓制度は、夫婦同姓を望む個人の権利に何らの影響も及ぼすものではないのであり、女性の社会進出が進む中、真の両性の平等と男女共同参画社会を実現する上で早急に実現しなければならない課題である。
 また、民法上女性にのみに課される再婚禁止期間について、夫婦や家族のあり方の多様化に加え、科学技術の発達が目覚しい今日、その立法事実はもはや失われたというべきである。離婚後300日以内に懐胎した子は前夫の子と推定するという民法772条2項の規定についても同様であり、その早期の撤廃が求められる。
 政府は、民法(家族法)改正に着手しない理由として、世論調査の結果を挙げているが、平成18年に内閣府が行った調査結果では、60歳未満の年齢層では男女を問わず、選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対する者を上回っている。民主党の政策集である「政策議論の到達点」の中でも、選択夫婦別姓の早期実現、婚外子の相続差別の撤廃、再婚禁止期間の100日間への短縮及び嫡出推定規定の改善が明記され、かかる到達点に向け可及的速やかな着手がなされるべきである。
 更に、日本における民法(家族法)改正の遅れは、度々国連においても問題視されている。特に女性差別撤廃委員会は、本年8月7日、条約の履行に関する第6回政府報告書に対する最終見解において、繰り返し指摘してきたこの問題に関し、「前回の最終見解における勧告にもかかわらず、民法における婚姻適齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、及び夫婦の氏に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する。更に、委員会は、戸籍制度及び相続に関する規定によって嫡出でない子が依然として差別を受けていることについて強く懸念を有する。委員会は、締約国が、差別的法規定の撤廃が進んでいないことを説明するために世論調査を用いていることを懸念をもって留意する。」と批判している。
 よって当会は、選択的夫婦別姓の導入、非嫡出子の相続分の差別撤廃等を始めとした国民生活の基本法ともいうべき民法(家族法)の改正が国会に早期に提案され、速やかに可決成立されることを強く求める。

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