会長声明

2010/02/03

国籍を調停委員の就任要件とするのを止めるよう求める会長声明

2010年(平成22年)2月3日
第二東京弁護士会 会長 川崎達也
09(声) 12号

 本日、当会は、東京地方裁判所から当会が同裁判所民事調停委員に推薦した当会所属の大韓民国籍の弁護士につき、日本国籍を有しないことを理由として任命権者である最高裁判所に推薦しない旨の告知を受けた。
 かねてより、最高裁は、調停委員につき「公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする」ものと位置づけ、「その就任のためには日本国籍が必要である」との見解を表明してきた。当会は、この見解に承伏することはできない。
 民事調停委員は、専門的知識もしくは社会生活上の豊富な知識経験を生かし、市民の間の民事もしくは家事の紛争を当事者の互譲により解決するための支援・助力を行うことをその職務とする。その職務内容を見る限り、日本国籍を有しない者が執り行うことによって具体的な支障が生じるものとは考えられない。また、その職務に公権力の行使としての、また、(国や自治体の)重要な施策の決定やこれへの参画としての側面があるとはいえないものである。調停委員の就任に日本国籍の保有を要求することには何らの合理的な理由もないというべきである。
 日本国憲法第3章の基本的人権の保障に関する諸規定は、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、わが国に在留する外国人等もその対象とする。したがって、国籍を理由に差別をすることが許されるのは、そのような扱いをしなければ、国政上あるいは国民の権利や利益を保護する上で、明白かつ重大な障害が生じる場合に限られるというべきである。
 最高裁が、調停委員の地位、身分が公務員に準じるという形式的な理由のみで、日本国籍の保有をその就任の条件とすることは、憲法14条に定める法の下の平等、憲法22条に定める職業選択の自由を侵害するものというべきである。また、法律上、規則上の制限規定がないのに、その採用を拒絶するのは法治主義の原則にも反するというほかない。
 当会は、最高裁に対し、調停委員の任命に日本国籍の保有を条件とすることを止めること、また、東京地方裁判所に対し、日本国籍を有しない者であっても、民事調停委員等規則に定める要件を満たす者であれば最高裁に推薦することを強く求めるものである。

もどる