会長声明

2010/04/21

「沖縄密約情報公開訴訟」東京地裁判決に関する会長声明

2010年(平成22年)4月21日
第二東京弁護士会 会長 栃木敏明
10(声)第2号

 東京地方裁判所は、2010年4月9日、情報公開の歴史に刻まれる判決を下した。ジャーナリストらが沖縄返還交渉における財政密約文書の公開を求めた訴訟において、同文書を不存在とする外務大臣及び財務大臣の決定を取り消し、両大臣に開示決定を命じるとともに、原告らの知る権利が侵害されたとして国に慰謝料の支払を命じたのである。

 本判決は、旧来の政権が長年にわたって、財政密約の存在を否定し続けてきたなか、密約の締結経過を丹念に追ったうえで、その存在を明確に認めたものであり、日本の民主主義にとって画期的なものといえる。国民に永遠に開示されないとの認識のもとで密約が締結されたうえ、重要文書が破棄されるような事態は、必要な情報を得たうえで議論をして政策を決定するという健全な民主主義体制を歪めるものであり、ひいては国の方向性を誤らせてしまう危険がある。
 今回の判決は、日本の民主主義の成熟を促すものであり、情報公開革命と評価することができよう。

 また、本判決は、文書の存否の主張立証責任に関する新しい判断枠組みを示した。すなわち、開示請求者が、文書が職務上作成されたうえ、取得、保有されたことを主張立証すれば、継続して文書が保有されていると事実上推認できるとし、国において廃棄・移管等、保有が失われたことを主張立証しない限り、文書の保有の推認が維持されるとした。国民が政治的判断をするにあたって必要となる情報が記載された公文書の不開示決定において、行政の説明責任を明確にした点で、高く評価できる。

 さらに、同判決はより良い民主主義を求める1人ひとりの市民の動機・心情を汲み上げ、不開示決定を行った当時の外務省の対応を、開示請求者らの期待を裏切り、国民の知る権利をないがしろにする対応で不誠実と厳しく指弾した。国民の知る権利の行使と民主主義が密接に関わることを明確に位置づけたもので、刮目に価する。

 当会は、政府に対し、本判決に従い、密約の存在を前提にした関係者からの聞き取りを行い、請求されている文書の存在・破棄について明確にするよう求めるとともに、現在すすめられている情報公開法改正の検討作業等において、本判決の趣旨を反映して、国民の知る権利の保障を明記し、より成熟した民主主義制度を確立するよう求める。

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