会長声明

2010/04/22

「憲法改正手続法」の施行延期を求める会長声明

2010年(平成22年)4月22日
第二東京弁護士会 会長 栃木敏明
10(声)第3号

 憲法改正の国民投票に関する手続等を定めている「憲法改正手続法」は、2010年5月18日に施行される予定となっている。同法は、国会において十分な審議が尽くされず、また、参議院日本国憲法に関する特別調査委員会が合計18項目にもわたる附帯決議を行うなど、多くの問題点が解消されないまま2007年5月に成立するに至った法律である。
 国民投票は、国の最高法規である憲法を改正するか否かについて、主権者である国民に対してその意思を直接問うものである。したがって、国民投票が実施されるにあたっては、市民一人一人に十分な意見や情報が提供されたうえで、あらゆる市民が多様な意見を自由に表明でき、そのために可能な限りの表現手段が保障される必要があり、その重要性は重ねて強調されなければならない。当会も、会長声明や意見書において、国民投票において最低投票率または最低得票数についての規定を設けることが必須であること、公務員・教育者の国民投票運動の制限やテレビ等の有料意見広告の制限などについて多くの問題があることを指摘し、同法の抜本的な見直しを求めてきた。
 しかし、国会は、附帯決議がなされた事項を含め、抜本的な見直しに向けた検討をほとんどしていない。加えて、同法の附則において、「この法律が施行されるまでの間に」、投票年齢の問題に関し、「年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされ、また、公務員の政治的行為に対する制限に関しても、「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法、地方公務員法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされているにもかかわらず、いまだに必要な措置は講じられていない。
 特に、2008年10月に我が国は国際人権(自由権)規約委員会から「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限は撤廃すべきである」との勧告を受け、さらに、国家公務員法(政治的行為の禁止)違反被告事件に関する本年3月29日の東京高裁の違憲(無罪)判決が、「我が国における国家公務員の政治的行為の禁止が西欧先進国に比べ非常に広範なものになっており、世界標準の視点からも、刑事罰の対象とすることの当否、その範囲等を含め、再検討を求める」旨の付言をしていることからも明らかなとおり、政治的行為に対する制限に対する法制上の措置は必要かつ急務である。
 これまで当会が指摘してきた同法の問題点について、附則及び附帯決議が求めている検討がほとんどなされておらず、かつ必要な法制上の措置も講じられていない以上、当会は、施行期日を延期するよう求めるとともに、引き続き同法の抜本的な見直しを強く求めるものである。

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