会長声明

2010/07/29

死刑執行に関する会長声明

2010年(平成22年)7月29日
第二東京弁護士会 会長 栃木敏明
10(声)第7号

 昨日(7月28日)、東京拘置所において、2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
 今回死刑執行を命じ、執行にも自ら立ち会った千葉景子法務大臣は、昨年9月の就任会見において、「死刑の存廃、終身刑の導入の議論もある。広い国民的議論をふまえ、道を見いだしたい」旨発言し、これまでも執行に慎重な姿勢を示していた。ところが、国民的議論はもとより、その前提となる情報公開に向けた具体的な取り組みもなされないままに死刑執行がなされたことは極めて遺憾であり、強く抗議するものである。

 日本における死刑制度及びその運用状況は、国際社会から大きく注目されている。
 2007年12月に、国連総会本会議で、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択され、さらに、2008年10月、国連の国際人権(自由権)規約人権委員会は、日本政府に対し、「世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」との勧告を行った。しかし、周知のとおり、日本における死刑の執行件数は急激に増加しており、国際的潮流とは明らかに逆行している。また、おりしも、昨年5月から裁判員制度が施行され、一般市民が裁判員制度を通じて死刑判決の言渡しに関わる可能性が生じており、市民に対して死刑制度の運用実態が広く開示されなければならず、死刑制度に関する関心もかつてないほど大きくなりつつある。

 千葉法務大臣は、昨日の記者会見において、今後、東京拘置所の刑場を報道機関に公開し、法務省内に死刑執行を考える勉強会を立ち上げる意向を示したとされる。これらの提案は、今回の死刑執行に先立って行われるべきだったものではあるが、当会は、2006年以降、東京拘置所に対して刑場の公開を求めてきたものであり、上記の提案が死刑制度に関する極端な秘密主義に風穴をあける契機となることを期待する。同時に、当該勉強会が万が一にも死刑制度を存置する結論ありきの議論とならぬよう、真に開かれた国民的議論の場になることを併せて求めるものである。

 当会は、これまで、死刑の執行を一時的に停止し、代替刑としての仮釈放の可能性のない終身刑の導入の可否を含め刑罰のありかたを総合的に検討することを繰り返し訴えてきたものであるが、改めて、政府に対し、死刑の執行を停止し、死刑制度の存廃について国民的議論を行うよう強く要請するものである。

もどる