会長声明

2011/05/26

布川事件再審無罪判決に関する会長声明

2011年(平成23年)5月26日
第二東京弁護士会 会長 澤井 英久
11(声)第4号

 本年5月24日、水戸地方裁判所土浦支部は、いわゆる「布川事件」について、櫻井昌司氏及び杉山卓男氏の両氏に対して、再審無罪判決を言い渡した。
 櫻井・杉山両氏は、1967年(昭和42年)8月に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件につき、同年10月の逮捕以来、1978年(昭和53年)の上告棄却による確定を経て1996年(平成8年)に仮出獄するまで、29年もの長期にわたり身体拘束を受けていたもので、これまで両氏が被ってきた苦痛は、甚大なものである。ここまで両氏に苦しみを負わせてきた警察・検察は、そのえん罪に至る責任を深く自責すべきである。その上で、当会会員も加わった弁護団及び両氏を支えてきたご家族・支援者の方々の活動により、ようやく正義が実現されたことについては、高く評価する。
 本件については、代用監獄における虚偽自白の強要、両氏に有利な証拠の不開示、あいまいな目撃者証言の危険等その後問題とされた刑事裁判における諸問題が集積して有罪判決をもたらしたといえる。
 特に、捜査機関の取調べの一部が録音され、しかもその取調べテープに編集の痕跡が見られたことについては、現在試行されつつある取調べの一部分だけの録画・録音がいかに危険なものであることにつき明らかになったものである。
 今後同じ過ちを繰り返さず、櫻井・杉山両氏のような被害者を出さないために、代用監獄の廃止、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)、人質司法の打破、検察官手持ち証拠の全面開示の実現は、急務である。
 当会は、このようなえん罪を防止するため、えん罪の原因を調査究明し、その防止策について提言する第三者機関の設置を求めることをはじめとして、上記の刑事司法の諸課題についての抜本的改革に向けて全力を尽くすとともに、我々弁護士としても捜査段階の弁護活動の質をより高める取組みを継続する決意である。

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