会長声明

2013/03/26

成年被後見人の選挙権剥奪違憲無効判決についての会長声明

2013年(平成25年)3月26日
第二東京弁護士会会長 橋本副孝
12(声)第13号

 平成25年3月14日、東京地方裁判所は、成年被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法11条1項1号を違憲無効とし、成年被後見人の選挙権を認める判決を言い渡した。
 当該判決は、選挙権について、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書で保障されるとした上、国民から選挙権を奪うのは、それをすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし著しく困難であると認められる「やむを得ない事由」があるという極めて例外的な場合に限られると判断した。その上で、成年被後見人とされた者が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけではないことは明らかであることから、成年被後見人から一律に選挙権を奪うことは「やむを得ない」制限であるということはできず、憲法15条1項等に違反するものであり、無効であると判断したものである。
 当該判決は、諸外国の例も踏まえ、選挙権が民主主義の根幹をなす最も重要な基本的人権であることや、成年後見制度の理念を正確に理解した妥当な判断であり、積極的に評価することができる。これまで、選挙権が制限されるゆえに成年後見制度を利用できなかった障害者も多く、制度利用を阻害する大きな要因の1つとなっていたものであり、成年後見制度の理念である判断能力の不十分な人のノーマライゼーションを実現するためにも、速やかに是正される必要がある。また、2006年に採択された国連障害者の権利に関する条約を我が国で批准するためにも、早急な法改正が望まれるところである。
 当該判決において、成年被後見人の選挙権を一律かつ全面的に制限することの違憲性は明らかとなったのであるから、国は、本件判決に対して控訴することなく、一日も早く成年被後見人の選挙権を回復するためにも、速やかに法改正に向けた取組を行うべきである。

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