改正貸金業法の完全施行後2年を迎えての会長声明

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更新日:2012年07月26日

2012年(平成24年)7月26日
第二東京弁護士会会長 橋本 副孝
12(声)第2号

 深刻な多重債務問題の解決を目的として、出資法の上限金利の引下げと収入の3分の1以上の貸付けの禁止(総量規制)等を主要な内容とする改正貸金業法(2006年(平成22年)成立。以下「改正法」という。)が2010年(平成22年)6月18日に完全施行されて2年が経過した。
 改正法成立当時、多重債務は、高金利・過剰融資・過酷な取立て等により、多くの自殺者、家庭崩壊を生み出すなどの深刻な社会問題となっていた。かかる事態に対処するため、弁護士会は、日本弁護士連合会において「上限金利引下げ対策本部」を設置し、当会を含む各単位弁護士会においても、議会における請願活動、署名運動等、多重債務問題の抜本的な解決を目指した活動を行うなど、精力的な取組みを行い、ようやく改正法の成立が実現したものである。その結果、かつては230万人といわれた5社以上の借入れを有する多重債務者は、本年5月時点において43万人まで減少している。また、多重債務を理由とする自殺者の数も、2007年(平成19年)の1973人から2010年(平成22年)には1306人にまで減少し、自己破産申立件数も、2006年(平成18年)の16万5932件から2011年(平成23年)には10万0509件にまで減少するなど、改正法は、多重債務問題の解決に非常に大きな役割を果たしてきた。
 ところが、現在、資金需要のある中小企業が、正規の業者からの借入れができないためヤミ金融に流れていることなどを理由として、一部の国会議員の間では、年利30%を上限金利とする変動金利制の導入や総量規制の撤廃という、改正法の核心部分に関する規制緩和を盛り込んだ見直し法案が検討されているとのことである。
 しかし、2011年(平成23年)4月の金融庁の委託調査では、改正法完全施行後の借入申込者のうち、希望通りの融資を受けられなかったためにヤミ金融から借入れをした者はわずか0.5%に過ぎないとされている。また、ヤミ金融に関する相談件数や警察の検挙数も確実に減少しており、被害規模も小型化するなど、ヤミ金融被害が広がっているとする根拠は見出せない。
 中小企業の資金繰り悪化の懸念も、金融庁による全国の商工会議所へのアンケートによると、景気悪化による販売不振や東日本大震災の影響等が大きな比重を占めているとのことであり、必ずしも改正法の影響とはいえない。そして、景気の急速な悪化に対する資金繰り支援策として、政府が緊急保証・セーフティーネット貸付け等の金融円滑化対策を実施しているところである。現状において必要なのは、これらの施策の更なる充実であり、中小企業等の総合的な支援策である。改正法の見直しによる「短期・高金利」の資金提供は、かつての多重債務による社会問題を再び生じさせかねない。
 よって、当会は、上限金利規制や総量規制を緩和する法改正の主張に対しては強く反対するとともに、今後とも多重債務問題に関して残された多くの課題に積極的に取り組むことを宣言するものである。

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