参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明

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更新日:2012年10月19日

2012年(平成24年)10月19日
第二東京弁護士会会長 橋本 副孝
12(声)第5号

 本年10月17日、最高裁判所は、2010年(平成22年)7月11日に施行された第22回参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)に対し、各選挙区における議員定数が選挙区人口に比例して配分されておらず、最大で5.00倍の投票価値の較差が生じていたこと等を理由として各地で提起された選挙無効請求訴訟について、事情判決により請求を棄却した。

 しかし、この判決は、その理由中において
①「本件選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない」と違憲状態にあること

②「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある」として都道府県を単位とする選挙区割り制度を見直すことを要請したこと

③「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い」と衆議院と参議院に投票価値の平等の要請に差はないこと

の三点において正当な判示をしている。

 また、かつて2009年(平成21年)9月30日、最高裁判所は、2007年(平成19年)7月29日に施行された第21回参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)に対し、「定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない」と判断していたが、今回は更に踏み込んだものとして高く評価することができる。

 しかしながら、第22回参議院議員通常選挙においては、第21回参議院議員通常選挙よりも、投票価値の不平等はより拡大し、本件選挙の当時、選挙区間における議員1人あたりの選挙人数の最大較差は1対5.00であったにもかかわらず、最高裁判所が「本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとは言えない」として、無効判決を下さなかった点については、複数の個別意見が付されていることからも明らかな通り、なお議論の余地のあるところである。

 当弁護士会は2009年(平成21年)8月に行われた衆議院総選挙の小選挙区選挙について2011年(平成23年)3月23日に言い渡された最高裁判所大法廷判決に対して、同年3月25日、会長声明を発出している。同声明では「「全国民の代表」である国会議員を選任する選挙権の重要性に鑑みて、投票価値の平等が貫徹される必要がある。当弁護士会は国会に対し、本判決に沿って直ちに「1人別枠方式」を廃止するとともに、次回の衆議院選挙までに選挙区割りの見直しを行い、限りなく1対1までに解消するよう強く求めるものである。」と主張した。この投票価値を限りなく1対1までに解消するとの主張は、原則的には、参議院にも妥当するところである。

 もっとも、無効判決を下す場合の、その後の実効的な処理方法等については、なお議論の蓄積・成熟が期待される面があろう。

 当弁護士会は、従前から一貫して、投票価値の平等を実現するよう、国に求めてきたが、改めて、本判決の趣旨を踏まえ、直ちに公職選挙法を改正し、上記趣旨に沿った適正な選挙制度を構築することを求めるとともに、併せて、無効判決後の実効的な処理方法に関する議論の蓄積・成熟を期待するものである。

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