「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に関する会長声明

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更新日:2013年05月07日

2013年(平成25年)5月7日
第二東京弁護士会会長 山岸 良太
13(声)第2号

 4月12日に、法曹養成制度検討会議が「中間的取りまとめ」を公表した。
 司法制度改革においては、法の支配を社会の隅々に及ぼし、法曹の活動領域を社会全般に飛躍的に拡充することを前提に、司法試験合格者数3000人が目標とされた。そして、単純に合格者数を増加させるのではなく、多様なニーズに対応できる法曹としての質を維持するため、法科大学院を中核とし、司法試験・司法修習・継続教育という「プロセスとしての法曹養成」が導入され、併せて多様な経歴を有する者に法曹となる道を拓いた。当弁護士会においても、大宮法科大学院の設立に関与し、多彩な経歴の優れた法曹を多数輩出することができたと自負している。
 しかし、法科大学院が74校も設立され6000人近くを入学させたため司法試験の合格率が著しく低迷し、加えて法曹の活動領域の拡大については国を始めとする関係機関等の改革への取り組みが遅れたため、新人弁護士の就職難によるOJTの機会不足等の深刻な問題が生じている。

 中間的取りまとめは、このような危機的状況を踏まえ、法曹有資格者の活動領域、法曹人口、法曹養成制度の在り方についての検討結果を取りまとめたものであり、座長及び委員の真摯な努力に敬意を表するところではあるが、危機突破の処方箋としてなお問題点も少なくない。
 第1に、法曹有資格者の活動領域の拡大のため、国を始めとする関係機関による体制整備の必要性を最初に取り上げたことは評価できるが、拡大には相当の期間を要する。この間、3000人という数値目標を事実上撤回したことは妥当であるが、当面の合格者数を減少させる方向性をより明確にすべきである。
 第2に、全体としての法科大学院の入学者数の削減が急務であるが、他方、法曹の多様性を維持する観点からは、法科大学院の地域適正配置や夜間法科大学院の存続への配慮が今直ちになされなければならない。また、法科大学院の教育の質の向上について、司法試験合格率に触れるのみで活動領域の拡大に繋がる先端科目の充実等に触れられていない。しかも、厳格な修了認定を前提として司法試験科目を削減することは負担軽減策として良いが、選択科目の廃止は、活動領域の拡大の方向性に反する。
 第3に、司法修習については、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないよう、給費制を復活すべきであり、また、3000人撤回を受け希薄化していると言われる修習全般の見直しも必要である。
 その他、中間的取りまとめについては、司法試験受験回数制限の緩和、予備試験の位置づけ(法科大学院の例外的なバイパスに過ぎないことの徹底)など最終取りまとめに向けてなお課題が残されている。

 当弁護士会は、法曹養成制度検討会議が、司法制度改革の理念に基づき、今後パブリックコメント等を通じて寄せられる国民各層からの意見を十分に受け止めた上で、法曹志望者が希望を持てる道筋を示すよう強く要望するとともに、当弁護士会としても、国民の頼りがいのある法曹の養成に向けて、引き続き全力を尽くす所存である。

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