憲法第96条の発議要件緩和に反対する会長声明

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更新日:2013年06月04日

2013年(平成25年)6月4日
第二東京弁護士会会長 山岸 良太
13(声)第3号

 日本国憲法は、その前文の冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」としており、更に、第10章「最高法規」の中の第97条で、基本的人権の本質を「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と定めて、憲法の最高法規性の実質的理由が永久の権利としての基本的人権の尊重にあることを示し、第98条で憲法の最高法規性を、また、第81条で最高裁判所の違憲立法審査権を規定し、憲法が法律の上に立つもので、権力を縛り国民の人権を守るものであるという立憲主義を明示している。
 第96条は憲法改正の国会の発議要件を両院それぞれの総議員の3分の2以上と定め、更に、改正には国民投票を要するものとし、立憲主義に立つ憲法の中でも、上記の前文の趣旨からして、将来の国民や子孫が二度と過ちを繰り返さないよう改正手続を厳格なものとする「硬性憲法」であることを示している。
 また、この発議要件を両院の3分の2とした趣旨は、憲法は単純な多数決では変えることのできない根本原則であり、かつ、代議制をとる憲法において、議会での熟議を尽くして大多数の議員の一致があって初めて国民に対し発議すべきことを定めているものでもある。
 96条改憲派は、発議要件を緩和したほうがより国民主権に資すると主張するが、国会の発議を容易にすることは、政権交代の度に過半数を持った政権により憲法改正の発議が容易に行われることになって憲法の安定性を損なうとともに、代議制による熟議抜きで国民に重い選択を押し付けるものとして、国民の戸惑いを招く恐れすらある。
 また、諸外国を見ても、成文憲法の改正には、日本と同様の規定を有する韓国、ルーマニア、アルバニア等の国もあるし、さらに厳しい要件の国もあり(アメリカ合衆国、ベラルーシ、フィリピン等)、第96条の改正要件が硬性憲法として特別に厳しいものであるとは言えず、比較法的見地からしても、改正要件緩和を正当化する理由は見当たらない。
 弁護士法第1条により、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とするのであり、当会は、憲法改正手続の発議要件の緩和が、立憲主義の憲法を破壊し人権を損なうものとしてこれに反対であることを表明し、強く国民に警鐘を鳴らすとともに、これからも必要な活動をしていく決意である。

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