「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」に対する会長声明

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更新日:2013年11月20日
2013年(平成25年)11月20日
第二東京弁護士会会長 山岸 良太
13(声)第11号

1 2013年8月20日、厚生労働省の「今後の労働者派遣制度に関する在り方に関する研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学教授)は、今後の労働者派遣制度の見直しに向けての「報告書」をとりまとめた。これを受けて、同月30日から厚生労働省は、労働政策審議会の職業安定分科会・労働力需給制度部会にて、派遣法改正の審議を開始し、早ければ本年中に建議を出して、来年通常国会にも法改正をする予定とされている。

2 上記報告書は、労働者派遣法の抜本的見直しを図る内容となっている。労働者派遣法の常用代替防止の目的を見直し、企業が派遣労働者を永続的に利用できる仕組みとなっている。報告書が示す具体的な制度のイメージは、①個人レベルで派遣期間を制限することとして、有期雇用派遣については政令指定26業務を含めて、派遣労働者個人単位で上限期間(3年)を設定すること、②派遣期間の上限に達した派遣労働者について、雇用安定措置として、派遣元は、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、派遣元での無期雇用化等のいずれかの措置を講じなければならないこと、③派遣先は有期雇用派遣労働者の交代によって派遣の継続的受け入れが上限を超す場合には、労使のチェックの対象とすることとしている。

3 しかしながら、上記報告書に基づいて派遣法が改正されることになれば、次のような問題が生じる。第1に、政令指定26業務を含めて派遣期間の上限を設定することになれば、現状では政令指定26業務であれば派遣先で上限なく派遣として働くことができた派遣労働者が上限期間が設定されるが故に派遣先の仕事を失うことになる。これでは、派遣労働者の保護も、また派遣先の派遣労働者の活用のメリットも否定することになる。第2に、雇用安定措置については、派遣先への直接雇用申入れも、派遣元での無期雇用化も、私法的な効力がない以上、実効性を欠き、多くの派遣労働者が失職することを防止できない。第3の派遣先での労使のチェックも、派遣期間が上限に達した場合、派遣労働者を入れ替えて派遣を継続することを労使が承認しないことは想定できず、常用代替防止を図る実効性はない。これらの制度改革では、全ての有期派遣労働者が、上限3年ごとに派遣先の仕事を失う不安定な立場に置かれるにもかかわらず、他方で、派遣先は上限を超えても派遣労働者を入れ替えることで派遣労働者を永続的に活用できることになり、常用代替防止の原則は事実上、放棄されることになる。

4 当会は、2009年6月4日に「労働者派遣法の抜本改正を求める会長声明」、2011年7月7日「労働者派遣法の抜本改正のための早期審議入りを求める会長声明」を発表し、労働者派遣法改正について、(1)派遣対象業務を専門的なものに限定すること、(2)登録型派遣等を全面的に禁止すること、(3)派遣可能期間経過後の派遣について、直接雇用に移行するみなし規定を設けること等を提言してきた。しかしながら、上記報告書の制度改革の方向は、上記の当会の意見に逆行するものといわざるを得ない。
 当会としては、労働政策審議会において、上記報告書の問題点を徹底的に審議した上で、派遣労働者の雇用安定を確保し、常用代替防止を維持するための労働者派遣法改正を行うよう求めるものである。
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