商品先物取引についての不招請勧誘禁止撤廃に反対し、改正金融商品取引法施行令に同取引に関する市場デリバティブを加えることを求める会長声明

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更新日:2013年11月26日
2013年(平成25年)11月26日
第二東京弁護士会会長 山岸 良太
13(声)第13号

 本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」との旨の答弁を行った。
 総合取引所構想実現のための金融商品取引法の改正法が2012年9月6日に成立し、2014年3月に施行が予定されているところ、改正施行令第16条の4(不招請勧誘等が禁止される契約)に、商品先物取引(商品関連市場デリバティブ)も加えなければ、総合取引所に上場する商品先物取引には不招請勧誘禁止規定が適用されなくなる。  上記答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対して監督権限を有する金融庁が、総合取引所における商品先物取引に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものである。

 不招請勧誘禁止とは、商品取引契約締結の要請をしていない顧客に対し、訪問し、又は電話をかけて、商品取引契約の締結の勧誘をすることである(商品先物取引法214条9号)。商品先物取引は、商品のわずかな値動きで極めて多額の損益が生じるレバレッジのかかった投機取引であり、これに適合する消費者は極めて限定されているはずであるところ、法改正により不招請勧誘が禁止されるまでは、業者からの突然の勧誘の電話により、十分な説明がないために、しくみやリスクを理解せずに取引を開始した者が、悪名高い「客殺し商法」で損害を拡大させてゆくという被害が長年に渡って多発していた。
 度重なる委託者保護を目的とした法改正にもかかわらず、違法勧誘行為が継続するという業界の自浄能力の欠如が正しく把握された結果、ようやく2009年の商品取引所法改正により不招請勧誘禁止規定が導入され、商品先物取引を巡る消費者の相談は激減した。その後、2012年8月、経済産業省構造審議会商品先物取引分科会において、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」との報告書がまとめられ、不招請勧誘禁止維持の方向が確認された。
 現在、商品先物取引被害は減少したとはいえ、なお生じている被害実態をみれば、法の潜脱を図るなどの悪質なものであり、消費者・委託者保護の徹底が定着したとは到底言えない状況である。それにもかかわらず、総合取引所構想のもと、商品先物取引の被害実態の検証がなされないまま不招請勧誘禁止を撤廃すれば、従来通りの被害が多発することは明らかである。このような結果は、上記報告書の内容にも反するものであり、見過ごすことはできない。

 よって、当弁護士会は、消費者保護の観点から、総合取引所の下でも、商品先物取引の不招請勧誘禁止は維持すべきであり、改正金融商品取引法施行令で定める不招請勧誘等が禁止される契約には、商品関連市場デリバティブも加えるよう強く求める。
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