金融商品取引法改正による投資型クラウドファンディングに関する会長声明

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更新日:2014年05月01日

2014年(平成26年)5月1日
第二東京弁護士会 会長 山田 秀雄
14(声)第2号

1 現在国会に上程されている金融商品取引法改正法案では、投資型クラウドファンディングに関する規制の整備が提案されている。
「クラウドファンディング」は、「新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結びつけ、多数の資金供給者から少額ずつ資金を集める仕組み」であり、「投資型クラウドファンディング」はこの資金集めを非上場株式(未公開株)またはファンド持分の発行の形で行うものである。
今回の改正法案では、①現在自主規制により禁止されている非上場株式の販売勧誘について、インターネットを通じて行う少額のものについて、禁止措置を解除すること、及び、②少額の非上場株式又はファンド持分の販売勧誘を行う投資型クラウドファンディング業者の参入を容易にするため、参入要件を緩和すること等が提案されている。

2 しかし、現状、未公開株やファンドによる詐欺(詐欺的行為)被害が極めて広範なものとなっており、この間、悪質業者・詐欺グループ等が、規制の緩い分野、規制の実効が図られていない分野に進出し、被害を拡大してきたことに鑑みると、悪質業者・詐欺グループがクラウドファンディングを悪用することは必至である。また、経営体制や運営体制が十分でない事業者による安易な資金集めが行われることも懸念される。
そもそも、未公開株は価値の評価や換価が容易でなく、ファンドもリターンやリスクの把握が容易でないという特性を有しており、さらに新規・成長企業のものであればリスクは相当高い。こうした特性やリスクが投資者に十分に理解されていなければ、投資者が不測の損害を被ることになりかねない。

3 こうした弊害の現実化を防ぐため、投資型クラウドファンディングの制度の導入にあたっては、次の点に配慮した制度整備を行うべきである。
① 投資型クラウドファンディング業者の参入要件として、金融商品取引業者としての専門性が確保されていること、ウェブサイトで提供する情報の適切な確認・調査の体制が確立していること、コンピューターシステムの管理体制が整備されていること等を求めるべきである。 ② 投資型クラウドファンディング業者に認められる「少額」の募集等は、一人1件当たり「投資額10万円以下」とすべきである。また、一人の投資者に募集等ができる年間の合計件数や合計金額に上限を設けるべきである。 ③ 投資型クラウドファンディング業者は、投資者に対して、非上場株式やファンドの特質やリスクなどについて注意喚起を行うとともに、投資者が理解していることを確認することを義務づけるべきである。 ④ 投資型クラウドファンディング業者がウェブサイト上で提供すべき情報を具体的に定めるとともに、投資型クラウドファンディング業者が、提供する情報の正確性を確認すべき義務を負うことを明確化し、ガイドラインなどにより確認義務の内容を具体化すべきである。また、ウェブサイト上に提供した情報については、募集期間経過後も、投資者によるウェブサイト上での閲覧を可能とすることを義務付けるべきである。 ⑤ 投資型クラウドファンディング業者による電話・訪問勧誘は、禁止すべきである。

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