行政書士法改正に反対する会長声明

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更新日:2014年05月09日

2014年(平成26年)5月8日
第二東京弁護士会 会長 山田 秀雄
14(声)第4号

 日本行政書士会連合会は、「行政書士が作成し、官公署に提出した書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求めて行政書士法改正の運動を推進してきたところ、今国会において、議員立法により、同法改正法案が提出される可能性があるとされている。
 しかし、代理権の範囲にかかわらず、行政書士に行政不服申立代理権を付与することは国民の権利利益の擁護を危うくするおそれがあり、容認できない。日本弁護士連合会が、2012年(平成24年)8月10日に会長声明で反対の立場を表明したのを始め、既に複数の単位弁護士会が会長声明で反対の立場を表明しているところ、当弁護士会も、本声明をもって、反対の意見を表明する。

 反対の理由は、以下のとおりである。
 まず、行政書士の主たる業務は、行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とした、行政庁に対する各種許認可関係の書類作成・提出であり、その業務ないし職務の性質上、行政庁の違法・不当な行政処分を是正する行政不服申立制度とは、本質的に相容れない。
 第2に、行政不服申立ての代理人を務めるに当たっては、行政訴訟の提起や訴訟の見通しを十分視野に入れる必要があるところ、これらの点において、行政書士の能力担保は十分とはいえない。
 第3に、行政書士について定められている倫理綱領は、その内容において、当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件の取扱いを前提にする弁護士倫理と異なっており、行政書士において紛争事件を取り扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。
 第4に、仮に、行政書士に上記のような代理権を与えた場合、いったん国民の権利利益の擁護が全うされない事態が招来されれば、それは取り返しのつかないことであって、限定的であったとしても代理権は与えるべきではない。
 第5に、弁護士は、行政による違法・不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げており、ことさら行政書士に代理権を付与しなければならないという社会的必要性も存在しない。

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