労働者派遣法改正に反対する会長声明

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更新日:2014年05月12日

2014(平成26)年5月12日
第二東京弁護士会 会長 山田 秀雄
14(声)第5号

1 内閣は、2014(平成26)年3月11日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」と言う)を、今通常国会に上程した。改正案は、同年1月29日付労働政策審議会「労働者派遣制度の改正」建議を踏まえたものであり、同建議は、2013(平成25)年8月20日付厚生労働省「今後の労働者派遣制度に関する在り方に関する研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学教授)の「報告書」にそって、同年12月12日の労働政策審議会職業安定分科会労働力受給制度部会が取りまとめたものとほぼ同一内容である。当弁護士会は、上記報告書に対し、2013(平成25)年11月20日付会長声明にて、上記報告書に基づく派遣法改正は、派遣労働者の雇用安定及び常用代替防止を損なうこととなると懸念を表明してきた。しかるに、改正案の内容は当弁護士会のこの懸念を払拭するものではなく、かえってその懸念が現実化するものとなっている。

2 改正案の概要は、①指定26業務による区分及び業務単位での派遣期間制限を廃止すること、②有期雇用派遣(派遣元と派遣労働者間の雇用契約が期限の定めのあるもの)について派遣労働者の派遣制限期間を「同一の組織単位」での派遣期間3年とすること、③有期雇用派遣について派遣先が3年毎に過半数労働組合等から意見を聴取すれば同一の事業所においてその後も継続して派遣労働者を利用できるとすること、④無期雇用派遣(派遣元と派遣労働者間の雇用契約が期限の定めのないもの)や60歳以上の派遣労働者等については業務に関わらず派遣期間制限から除外するものである。

3 しかしながら、改正案が成立すれば、次のような問題が生じる。第1に、指定26業務を含めて派遣期間の上限を設定することになれば、現状では指定26業務であれば派遣先で上限なく派遣として働くことができた派遣労働者は派遣制限期間が設定されるが故に派遣先の仕事を失うことになる。これでは、派遣労働者の保護も、また派遣先の派遣労働者の活用のメリットも否定することになる。第2に、全ての有期派遣労働者が、上限3年ごとに派遣先の仕事を失う不安定な立場に置かれるにもかかわらず、他方で、派遣先は上限を超えても派遣労働者を入れ替えることで派遣労働者を永続的に活用できることになり、常用代替防止の原則は放棄されることになる。

4 当弁護士会は、2009年6月4日に「労働者派遣法の抜本改正を求める会長声明」、2011年7月7日「労働者派遣法の抜本改正のための早期審議入りを求める会長声明」を発表し、労働者派遣法改正について、(1)派遣対象業務を専門的なものに限定すること、(2)登録型派遣等を全面的に禁止すること、(3)派遣可能期間経過後の派遣について、直接雇用に移行するみなし規定を設けること等を提言してきた。しかしながら、改正案は、上記当弁護士会の意見に逆行するものといわざるを得ない。当弁護士会としては、改正案の内容に反対し、派遣法についての上記当弁護士会の意見にそった抜本的改正を求める。

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