少年の実名報道に重ねて抗議する会長声明

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更新日:2015年02月06日

2015年(平成27年)2月6日
第二東京弁護士会会長 山田 秀雄
14(声)第15号

本年2月5日発売の「週刊新潮」は、1月27日に愛知県名古屋市で発生した事件について、被疑者の少年の実名を挙げ、顔写真を掲載した。このような報道は、少年時の犯行について、氏名、年齢、職業、容ぼう等によりその者が当該事件の本人と推知することができるような記事又は写真の掲載を禁止した少年法61条に違反するものであり、極めて遺憾である。

少年事件の背景には、家庭、地域、学校等における様々な要因が存在し、少年個人への非難のみに比重を置くのではなく、少年の可塑性と成長発達の可能性を重視するべきである。

このような見地から、少年法61条は、少年事件を起こした少年の実名報道等を禁止し、 少年及びその家族の名誉・プライバシーを保護することにより、少年の立ち直り、更生再犯の防止を図ろうとするものである。

国際的に見ても、子どもの権利条約40条2項は、刑罰法規を犯したとされる子どもに対する手続のすべての段階における子どものプライバシーの尊重を保障している。また、少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)8条も、少年のプライバシーの権利は、あらゆる段階で尊重されなければならず、原則として少年の特定に結びつきうるいかなる情報も公表してはならないとしている。

報道の自由もまた、憲法が保障する重要な権利ではあるが、事件やその背景を報道する上で、少年の実名及び写真の掲載は、不可欠な要素とはいえない。少年法の明文規定を無視し、実名報道により少年に対する社会的制裁を加えることは、報道の自由を逸脱した行為である。

当弁護士会は、2013年(平成25年)3月19日にも、少年事件の少年の実名及び写真を掲載した「週刊新潮」の報道に対し、これに抗議する会長声明を公表した。それにもかかわらず、同種の報道が繰り返されていることは誠に遺憾である。当弁護士会は、各報道機関が、その社会的責任を踏まえ、少年法を尊重して適切な報道を行うよう、重ねて強く要望する。

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