憲法記念日を迎えての会長声明

LINEで送る
更新日:2015年05月01日

2015年(平成27年)5月3日
第二東京弁護士会会長 三宅 弘
15(声)第1号

 本日、施行から68回目の憲法記念日を迎えました。
 第二次世界大戦とりわけ満州事変からアジア・太平洋戦争を経験した日本国民は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し」て日本国憲法を定めました。憲法前文と第9条に基づき戦争を放棄する徹底した恒久平和主義を貫いて、この憲法により政府の行為としての戦争を行わないことを国の内外に宣言したのです。戦後70年間にわたって一人も戦場で殺すことも殺されることもなく平和国家として世界に受け入れられ、戦争に関与せずにきた奇跡の国といわれています。日本は戦争をしない平和のブランドを持つ国として国際的にも賞賛される国を作り上げてきたのです。
 しかし、情報公開法改正法案の廃案、特定秘密保護法の強行採決による制定に始まり、個別的自衛の枠を超えて外国とともに「戦争ができる国」にしようとする動きがあります。過去すべての政権が戦後一貫して憲法9条の下では「集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈を取ってきましたが、この解釈は昨年7月1日の閣議決定によって変更されました。さらに、「日米防衛協力のための指針」が改定され、安全保障法制も改変する動きがあります。悲惨な戦争に対する苦い経験に基づいて「人の支配」から「法の支配」に発展し、立憲主義(憲法主義)を謳い「権力を縛る最高法規」として憲法を確立してきた経緯に反し、時代を大きく逆行しようとしています。憲法を尊重しない国は、国際的にも信用を失うことになりはしないでしょうか。
 われわれ弁護士は、弁護士法第1条にあるとおり、基本的人権を守り、社会正義を実現することを「使命」としています。過去、第二次世界大戦のときには、弁護士が「大日本弁護士報国会」を結成するなどして総戦力体制に組み入れられてしまった苦い教訓があります。戦争は最大の人権侵害です。この国を「戦争ができる国」にしてしまっては、弁護士法1条の趣旨を貫くことはできません。われわれ弁護士は、全力を挙げてこのような事態を阻止しなければならないと考えています。
 日本国憲法前文は、アメリカ合衆国独立宣言、フランス人権宣言、朝鮮3・1独立宣言に比肩する、日本人の魂の叫びであるともいわれています。また、その翻訳調の文体は、村上春樹氏の文芸作品のように世界に受け入れられやすい日本語であるともいわれています。
 施行から68回目の憲法記念日にあたり、日本国憲法をもう一度ひもとき、平和国家の原点に立ち返るかどうか、ともに考えてみようではありませんか。

English(PDF)

もどる