「共謀罪」法案の再提出に反対する会長声明

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更新日:2015年08月24日

2015年(平成27年)8月24日
第二東京弁護士会 会長 三宅  弘
15(声)第12号

政府は、2003年以降、三度「共謀罪」の創設を柱とする組織的犯罪処罰法改正案(以下「法案」という。)を国会に提出したが、2009年7月衆議院解散により廃案となった後は提案されてこなかった。2013年12月秘密保護法の成立直後に、新聞各紙は、政府が再度法案の提出を検討していると報じた。官房長官はこれを否定したが、自民党の政調会長や法務大臣は、法案の提出検討を否定しなかった。政府は、改めて今秋予定される臨時国会に法案を提出する方針であると報道されている。
 既に当会は、この「共謀罪」は、基本的人権を侵害し、捜査権の濫用を助長するとして、2003年3月27日、2005年10月11日にも、その問題点を指摘した上で、法案に反対する会長声明を発し、その危険性を訴えてきた。 
 過去に廃案となった政府提出の法案は、長期4年以上の刑を定める犯罪について、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」を対象とするもので、「共謀罪」が成立する犯罪は窃盗、横領、背任、公職選挙法違反など600を超える。
 犯罪の実行行為がなくとも合意等をしただけで処罰をする「共謀罪」は、個人の行為ではなくその意思や表現そのものを処罰するものであり、犯罪意思だけでは処罰しないとしてきた近代刑法の基本原則に反する。のみならず、意思形成段階を処罰の対象とすることにより、国民の思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法に定められた基本的人権を侵害する危険性が極めて強いものである。
 さらに、「共謀罪」の謀議の立証のためには、自ずと、国民の会話、電話、ファックス、メール、SNS等を捜査の対象とすることにならざるをえず、その結果、国民のプライバシーが侵害されるとともに、通信傍受法の対象犯罪に「共謀罪」を加え、また、市民団体などに捜査機関のスパイが送り込まれ、謀議の段階で、司法取引による密告やおとり捜査などが実施される可能性がある。憲法31条が保障する適正手続が害されるとともに、既に一部に「共謀罪」を規定する特定秘密保護法と相まって、息苦しい監視社会が現実のものとなる危険性が高い。
 政府は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という。)を批准するために、「共謀罪」を新設しなければならないと説明している。しかし、条約では、「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」と規定され、組織犯罪に関連する重大犯罪について未遂以前に処罰する規定があれば、条約を批准することは可能である。既に我が国の刑法等においては、組織的犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪について、予備罪及び陰謀罪が規定されていることに加え、判例理論として共謀共同正犯理論が確立しており、その当否はともかく、組織的犯罪処罰法や暴力団対策のための諸立法なども含め、組織犯罪について広範な処罰が可能となっている。これらの事情により、我が国において、組織的犯罪集団の関与する犯罪行為について、政府が提案するような「共謀罪」を新設することなく、条約を批准することは可能である。
 この共謀罪について、政府が名称やその内容を一部変えたうえで、法案の再提出を行う可能性が指摘されている。しかし、人と人との合意等だけで、刑事処罰できるとする「共謀罪」は、多少の修正を加えたとしても、近代刑法の基本原則に反し、基本的人権を侵害し、適正手続に違反するなど、極めて深刻な問題があると言わざるを得ない。
 よって、当会は、「共謀罪」法案の再提出には反対することを重ねて強く表明する。

以上

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