民法の成年年齢の引下げと消費者被害に関する会長声明

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更新日:2015年10月28日

2015年(平成27年)10月28日
第二東京弁護士会 会長 三宅 弘
15(声)第15号

 2007年5月に成立した国民投票法の附則第3条を受け、2015年6月17日に公職選挙法が改正され、選挙年齢が18歳に下げられることとなった。これを受けて、民法の成年年齢の引下げが議論されている。

 民法の成年年齢を引き下げた場合に最も大きな問題となるのは、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法第5条第2項)を喪失することである。現行民法においては、18歳、19歳の若年者を含む未成年者が単独で行った法律行為については、未成年者であることのみを理由として取り消すことができる。このため、未成年者取消権(民法第5条第2項)は、未成年者が違法もしくは不当な契約を締結するリスクを回避するにあたって絶大な効果を有しており、かつ、未成年者を違法もしくは不当な契約を締結するよう勧誘しようとする事業者に対しては最大の抑止力となっている。現行民法のもとでは20歳以上の者が消費者被害の標的となっているところ、その標的となる層が18歳、19歳にまで拡大することは必至である。

 しかも、若年者の自立の遅れが指摘されている昨今においては、20歳の若年者の場合にも増して、18歳、19歳の若年者の間で消費者被害が蔓延してしまう可能姓が極めて高いといえる。また、18歳、19歳の若年者は財産的基盤を有しないため、結局は親が肩代わりを余儀なくされ、家庭にも影響を及ぼすことになる。

 民法の成年年齢を引き下げる前提として、若年者に対する消費者教育が十分な効果をもたらしたことについて時間をかけて検証する必要があるが、消費者教育推進法は2012年12月に施行されてから未だ3年弱しか経っておらず、そのような検証がなされたとは到底言い難い状況にある。

 選挙年齢の引下げは18歳、19歳の若年者に権利を付与するものであるのに対し、民法の成年年齢の引下げはこれらの若年者に私法上の行為能力を付与する反面、未成年者取消権(民法第5条第2項)を喪失せしめるものであり、同列に論ぜられるべきものではない(実際、成年被後見人は行為能力が制限されているが選挙権は認められている)。民法の成年年齢の引下げについては、私法上の行為能力を付与するにふさわしい判断能力があるかという点が正面から論じられるべきものである。

 加えて、民法の成年年齢の引下げについては、他の多くの関連法の改正にもつながるものであるから、若年者と若年者を取り巻く多くの関係者(親、教育関係者、行政関係者、消費生活専門相談員など)の意見を十分に聴いて、その是非を判断すべきである。しかしながら、現状では、この点についても国民の間で十分な議論がなされているとは言えない。

 よって、当会は、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることの是非については、より十分な時間をかけた国民的議論を経て決定する必要があるから、そのような熟議を経ないで決定することのないように求める。

民法の成年年齢の引下げと消費者被害に関する会長声明(PDF)

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