夫婦同姓の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判決を受けて 家族法における差別的規定の改正を求める会長声明

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更新日:2015年12月18日

2015年(平成27年)12月18日
第二東京弁護士会会長 三 宅 弘
15(声)第18号

 12月16日、最高裁判所大法廷(寺田逸郎裁判長)は、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について、「婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値する」とした上で、6ヶ月の再婚禁止期間のうち「100日超過部分については、民法772条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない」として、「同部分は、憲法14条1項に違反するとともに、憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである」と判示したが、他方で、「100日超過部分が憲法14条1項及び24条2項に違反するものとなっていたことが、国会にとって明白であったということは困難である」として、その改正をしなかったことは「国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである」と判示した。再婚禁止期間のうち100日超過部分が憲法違反であるとした判断は評価できるが、当会は、この判示だけでは不十分であると考える。
 当会において多年にわたり主張してきたとおり、夫婦や家族のあり方の多様化に加え、科学技術の発達が目覚しい今日、女性にのみ課される再婚禁止期間は、全面的に撤廃されるべきである。この点、鬼丸かおる裁判官の意見は、「父性の推定の重複回避のために再婚禁止期間を設ける必要のある場合は極めて例外的であるのに、文理上は前婚の解消等をした全ての女性(ただし、民法733条2項に規定する出産の場合を除く。)に対して一律に再婚禁止期間を設けているように読める本件規定を前婚の解消等の後100日以内といえども残しておくことについては、婚姻をするについての自由の重要性や...父を定めることを目的とする訴え(同法773条)の規定が類推適用できることに鑑みると、国会の立法裁量を考慮しても疑問である」と指摘した上で「本件規定は全部違憲であると考える」とする。また、山浦善樹裁判官の反対意見は、「DNA検査技術の進歩により生物学上の父子関係を科学的かつ客観的に明らかにすることができるようになった段階においては、血統の混乱防止という立法目的を達成するための手段として、再婚禁止期間を設ける必要性は完全に失われているというべきであり、本件規定はその全部が違憲であると考える」とする。これらの意見こそ、説得的である。
 同日、夫婦同氏制を定める民法第750条にかかる別件において、同大法廷は、「婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない」とし、また、「夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない」とし、さらに、「夫婦同氏制が、夫婦が別の氏を称することを認めないものであるとしても、...直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない」として、憲法13条、14条1項及び24条に違反しないとし、「本件規定を改廃する立法措置をとらない立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない」と判示した。しかし、夫婦同氏制度に全く例外を認めない点において、遺憾である。
 他方で、同大法廷判決において、憲法24条への適合性を検討するにあたって、婚姻によって氏を改める者(現状では圧倒的に女性)が抱くアイデンティティの喪失感や婚姻前の氏の使用により形成された個人の社会的な信用、評価、名誉感情等の維持の困難などの不利益の存在を認めたことは、正当である。しかしながら、上記の不利益は通称使用の広まりにより一定程度緩和されうるとの指摘は、通称使用の限界を無視したものであるうえ、夫婦同氏に例外を設けないことの合理性を基礎づけるものではないことは、岡部喜代子裁判官及び木内道祥裁判官が指摘する通りである。すなわち、岡部裁判官の意見は、「夫婦同氏に例外を設けないことは、多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ、また、自己喪失感といった負担を負うこととなり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない」と指摘し、「夫婦が称する氏を選択しなければならないことは、婚姻成立に不合理な要件を課したものとして婚姻の自由を制約するものである。」として、「夫婦が別の氏を称することを認めないものである点において、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法24条に違反するものといわざるを得ない。」とする。また、木内裁判官の意見は、「国会の立法裁量権を考慮しても、夫婦同氏制度は、例外を許さないことに合理性があるとはいえず、裁量の範囲を超えるものである」として「憲法24条に違反する」とするものである。これらの意見は、当会の多年にわたる主張と軌を一にするものであって正当であると考える。憲法24条違反との岡部裁判官の意見には、櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官及び山浦善樹裁判官が同調しており、とりわけ3名の女性裁判官全員が同じ意見であることは、夫婦同氏制が孕む問題について象徴的であると言わなければならない。
 我が国は、1996年、法制審議会において、選択的夫婦別氏制度の導入と再婚禁止期間の短縮等を内容とする「民法の一部を改正する法律案要綱」が答申され、また、国連の女性差別撤廃条約委員会から、繰り返し、これら家族法における差別的規定(男女で異なる婚姻適齢を定める民法731条を含む。)の廃止を求められてきたにもかかわらず、これらの規定を改正することなく放置してきた。国会は、民法第733条について100日超過部分について速やかに改正をするにとどまらず、その全面的な撤廃に向けて検討・着手し、民法第750条及び民法第731条についても、速やかに、女性差別撤廃条約第2条(f)及び第16条第1項の求める改正をすべきである。

夫婦同姓の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判決を受けて 家族法における差別的規定の改正を求める会長声明

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