安保法制施行に抗議しその適用・運用に反対する会長声明

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更新日:2016年03月29日

2016年(平成28年)3月29日
第二東京弁護士会 会長 三宅 弘
15(声)第26号

 本日、平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下併せて「安保法制」という。)が施行された。
 安保法制は、大多数の憲法学者、元内閣法制局長官ら、さらには元最高裁判事および同元長官までもが、憲法違反であると指摘し、多くの国民が反対する中で、採決が強行され成立した法律である。同法制は、「存立危機事態」なる抽象的で不明確な要件の下に、歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、我が国が攻撃されていないにもかかわらず、自衛隊が海外で他国と共に武力行使できるものとなっている。加えて、外国軍隊の武力行使との一体化に当たるとして禁じてきた範囲にまで「後方支援」を拡大し、国連平和維持活動(PKO)に従事している自衛隊に駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限を付与した。これらにより、我が国が武力紛争の当事者となる危険性が現実のものとなろうとしている。
 これは、憲法前文と第9条に定める恒久平和主義に反し平和的生存権を侵害するおそれを増大させるものであって、いわば、これまで我が国が憲法9条の下で築き上げてきた「平和ブランド」を放棄し、「戦争する国」に大きく変質させかねないものである。のみならず、憲法改正手続を経ずに、一内閣の閣議決定による憲法解釈の変更に基づき法案を作成し、国会で可決されたものであり、立憲主義及び国民主権に反している。
 安保法制の施行により、我が国が集団的自衛権の行使としての武力行使におよぶ場合や、PKOや米軍等の武器等防護による武器使用や後方支援の拡大に踏み出して外国軍隊の武力行使と一体視される場合には、我が国が相手国からの攻撃の対象になる可能性も高まる。例えば、PKOとして南スーダンなどに派遣されている自衛隊に対し、駆け付け警護等の新たな任務と、任務遂行のための武器使用権限が付与されれば、自衛隊員が任務遂行中に武装勢力などの攻撃を受けた場合、それに反撃することで戦闘行為となることから極めて危険な事態を招来することになりかねない。これらの場合には、恒久平和主義が破られ、平和的生存権の侵害が現実化し、立憲主義が危殆に瀕する取り返しのつかない事態になりかねない。
 当弁護士会は、安保法制の成立以前から、この法案は憲法違反であり、一旦廃案にすべきであるとの主張を重ねてきたものであるが、本日の安保法制の施行に対し、あらためて憲法違反の安保法制の施行に抗議するとともに、その適用・運用に強く反対し、その廃止を求めるものである。

安保法制施行に抗議しその適用・運用に反対する会長声明(PDF)

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