「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)の廃案を再度求める会長声明

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更新日:2016年12月06日

2016年(平成28年)12月6日
第二東京弁護士会 会長 早稲田 祐美子
16(声)第8号

 2016年12月2日に衆議院の内閣委員会で,議員立法である「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)が可決された。当弁護士会は,本法案の廃案を求める声明につき,すでに2015年8月19日に発出しているところ,本声明で本法案の廃案を強く求めるものである。
 本法案は,我が国における民間企業よる賭博を合法化するものであるところ,かねてから現在の我が国における深刻なギャンブル依存症を助長するものではないかとの問題点が指摘されている。
 当弁護士会は,2015年8月19日付け会長声明においても,ギャンブル依存症の拡大,これによる多重債務問題の再発,青少年の健全な育成への悪影響,さらには暴力団員等の反社会的勢力の関与,マネー・ロンダリングの危険性,犯罪の発生の増加,風俗環境の悪化等に関する具体的措置の欠如について指摘している。ところが,これらの当弁護士会の指摘に対しては,これまでに未だ何ら具体的措置が示されていない。
 我が国においては,賭博が射幸心をあおり,勤労意欲を失わせ,勤労によって生計を維持するという国民の健全な経済・勤労の風習を堕落させるとの見地から,これを防ぎ,あわせて賭博に付随して生じる財産犯などの犯罪を防止するため,刑罰をもって賭博を禁止し(刑法185条,186条),特別法により許可を受けた公営団体にのみ賭博を認めている。
 このような法制度の趣旨に照らせば,民間企業における賭博を認める本法案を可決するにあたっては,上記の危険性に対する具体的措置を提言し,法案への国民のコンセンサスを得ることが必須である。

 本法案は,いったん2013年12月に国会に提出され廃案となり,さらに2015年4月に再提出となった後に長期間放置されていたが,2016年11月30日急きょ内閣委員会で審議入りをし,極めて短時間の不十分な審議だけでわずか3日後に採決を行った。かかる審議の在り方に対しては,マスメディアからも厳しい批判がされている。
 このような状況からすれば,本法案は国民のコンセンサスを得たとはとうてい言いがたい不十分な内容であると断じざるを得ない。
 また,カジノを中心とした統合型リゾートの経済的効果も必ずしも明らかではなく,韓国や米国アトランティックシティの例等,かえって地域経済へのダメージを与える懸念も指摘されている。観光立国は,カジノ解禁によるものではなく,我が国の豊かな自然や文化,人々の交流によって行うべきである。
 以上から,当弁護士会においては,本法案につき,即時廃案を再度求めるものである。
                                           以上

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)の廃案を再度求める会長声明(PDF)

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