いわゆる共謀罪を創設する組織的犯罪処罰法改正案に反対する会長声明

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更新日:2017年04月14日

2017年(平成29年)4月14日
第二東京弁護士会会長 伊 東   卓
17(声)第1号

 政府は,いわゆる共謀罪(「テロ等準備罪」)を創設する組織犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定の上,国会に提出し,本年4月14日,衆議院法務委員会において審議入りした。
 本法案は,過去これまで3度国会に上程されたが,いずれも大きな批判を受けて廃案になった「共謀罪法案」と基本的に同趣旨である。
 共謀罪は,犯罪遂行の合意(共謀又は計画)そのものを処罰し,犯罪の未遂,予備行為以前の段階の合意の成立だけで犯罪が成立するものである。わが国の刑事法は,人権保障の観点から,法益侵害に向けられた具体的危険性がある行為を処罰すること,そして,法益侵害の結果が発生する結果犯を処罰するのを原則とし,未遂犯の処罰は例外であり,さらに予備罪や陰謀・共謀罪は重大な犯罪について極めて例外的に処罰されるにすぎない。
 しかるに,本法案は,このような現行刑法の体系を根底から変容させるものであり,犯罪を共同して実行しようとする意思を処罰の対象とする基本的性格を有するもので,わが国の刑事法の基本原則や法体系に反し,人権保障機能を危うくするものである。
 特に本法案において懸念されるのは,構成要件上も恣意的,濫用的な解釈,運用を生ずる危険性を有していることである。例えば,本法案は,主体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」としているが,一般人の集まりであっても「性質が一変」すれば組織的犯罪集団とされる可能性がある。また,本法案では,一定の例示のあと「その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」を行うことが処罰条件となっているが,当該準備行為自体は犯罪行為である必要はなく,処罰範囲を画する上で何らの限定になっていない。
 政府は,本法案提出にあたって対象犯罪数を当初の676から277に減らすなど限定を加えたとしているが,共謀罪の本質的危険性は対象犯罪数の減少によって除去されるものでは決してない。
 他方で,わが国では,既に刑法および個別の法律により,重大犯罪については例外として予備罪や陰謀罪が定められ,テロ行為等についてもそれにより処罰可能である。また,共謀罪によって禁圧すべき行為が社会的に増大しているなど,共謀罪によって処罰範囲を拡大すべき社会的必要性(立法事実)があることを示す実証的な根拠は何ら存在していない。
 したがって,本法案については,憲法で保障された適正手続,思想良心の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権を侵害するおそれがあるから,当会は,本法案に強く反対する。

いわゆる共謀罪を創設する組織的犯罪処罰法改正案に反対する会長声明(PDF)

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