会長声明・意見書

死刑執行に抗議する会長声明

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更新日:2018年07月06日

2018年(平成30年)7月6日
第二東京弁護士会会長 笠井 直人
18(声)第6号

 本日、東京拘置所において3名、大阪拘置所において2名、広島拘置所において1名、福岡拘置所において1名に対し死刑が執行された。第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、13回目で、合わせて28名になる。
 今回執行された者の中には、現在弁護人がついて再審請求中である者、心神喪失の疑いがある者があった。再審請求中の死刑執行の問題もさることながら、心神喪失の疑いがある者についての死刑を執行することは、適正手続保障の観点から重大な問題がある。後者の点については、日本弁護士連合会が、2018年6月18日、心神喪失の状態に該当し、又はその疑いがある者に対し、死刑の執行を停止するとともに、死刑確定者について、適正手続保障の観点から、法務省から独立した機関において、心神喪失の状態にあるか否かを判定するなどの手続に関する一連の法整備を行うよう法務大臣及び日本政府に対し勧告したとおりである。
 言うまでもなく、犯罪により奪われた命は二度と戻ってこない。このような犯罪は決して許されるものではなく、犯罪により身内の方を亡くされた遺族の方が厳罰を望むことは、ごく自然な心情である。また、犯罪被害者・遺族のための施策は未だ十分ではなく、これらの方々が必要な支援を途切れることなく受けることができるように支援することは、 弁護士会を含む社会全体の責務である。
 他方、生まれながらの犯罪者はおらず、多くは、家庭、経済、教育、地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っている。刑罰制度は、犯罪への応報にとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならず、このような考え方は、再犯の防止に役立ち、社会全体の安全に資するものである。
 刑事司法制度では、誤判・えん罪の可能性を否定することはできず、誤って死刑を執行した場合、取返しがつかない。また、国際社会においては死刑廃止に向かう潮流が主流であり、死刑制度を残し、現実的に死刑を執行している国は、世界の中では少数にとどまっている。このような情勢において、我々の社会も、犯罪被害者・遺族に対する十分な支援を行うとともに、死刑制度を含む刑罰制度全体を見直す必要がある。
 当弁護士会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて、死刑執行を停止し、 日本弁護士連合会の第59回人権擁護大会における「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」に則り、2020年までの死刑制度の廃止を求めるものである。

死刑執行に抗議する会長声明(PDF)

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