新宿区の「デモの出発地として使用できる公園の基準」の見直しに反対する会長声明

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更新日:2018年07月25日

2018年(平成30年)7月25日
第二東京弁護士会会長 笠井 直人
18(声)第8号

1 2018年6月27日、新宿区は、「デモの出発地として使用できる公園の基準」を見直し、同年8月1日より、新たな基準とすること(以下「新基準」という。)を表明した。
 都市公園法18条は、都市公園の設置及び管理に関し必要な事項は条例で定めるとし、新宿区立公園条例(以下「条例」という。)3条1項3号は、デモや集会のような「演説又は宣伝的行為」で区立公園を使用する場合はあらかじめ区長の許可を得なければならないとし、同条4項は「公衆の公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合に限り」許可を与えることができるとしている。
 そして、従来、新宿区においてデモの出発地として使用できる公園は、住宅街にない公園面積が1000㎡以上で、100㎡以上の広場があるなどの基準を満たすものとして、①新宿中央公園、②柏木公園、③花園西公園及び④西戸山公園の4公園が指定されていた。
 ところが新基準は、使用できる公園は、住宅街に加え、学校、教育施設及び商店街に近接していないものとした。その結果、使用できる公園は、新宿中央公園のみとなる。そして同一公園において、先にデモの出発地としての申請がある場合は、原則として3時間以上の調整時間を経なければ次のデモの出発地としての使用を認めないとされており、許可申請が重複した場合は事実上使用できないこととなる。
 しかし、上記の新基準は、以下に述べるとおり、憲法21条の定める表現の自由、集会の自由を侵害し違憲であり、また、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」と定める地方自治法244条2項にも反し違法であるというべきである。

2 最高裁第三小法廷平成7年3月7日判決は、公の施設である市民会館における集会の自由の制約が問題となった、いわゆる泉佐野市民会館事件において、集会の自由の制約は基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから、経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下になされなければならないとした。
 そして会館使用の不許可が許されるのは、集会の自由を保障することの重要性よりも、集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると判断している。
 上記の判断枠組は、本件のようなデモの出発地としての公園の使用に関する制約の可否についても基本的に妥当するというべきである。

3 新宿区は、新基準の理由について「頻発するデモによる周辺の交通制約や騒音により迷惑しているため、公園周辺町会及び商店会からデモを制限してほしい旨の要望を受けているとともに、地域の様々な方からも同様な声が寄せられている。」などとしている。
 しかし、デモ行進によって一定の騒音や周辺道路の交通規制が生じるとして周辺住民等から要望がなされているとしても、それだけで、条例3条4項にいう、「公衆の公園の利用」自体に支障を及ぼす場合とはいえない。
 そもそも、道路、公園、広場など、一般公衆が自由に出入りできる場所が表現の場所として用いられるときには、「パブリック・フオーラム」として、表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要がある。
 公園をデモの出発地として使用することの制限が許容されるのは、表現の自由、集会の自由を保障することの重要性よりも優越する、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限定すべきである。
 新宿区の掲げる理由は、公園をデモの出発点として使用することを一律かつ事前に制限する理由にはなりえず、新基準によるデモ出発地公園の限定は、表現の自由に対する過度に広汎な規制であって許されないものである。

4 以上のとおり、新基準は、憲法21条の定める表現の自由、集会の自由を不当に侵害し違憲であり、また、地方自治法244条2項に反し、住民が公の施設を利用することを正当な理由無く拒絶する違法なものというべきであるから、新宿区は、違憲・違法の新基準を直ちに廃止すべきである。

新宿区の「デモの出発地として使用できる公園の基準」の見直しに反対する会長声明(PDF)

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