少年時の犯罪についての実名・顔写真報道及び被害者の実名・顔写真報道を受けての会長声明

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更新日:2018年10月26日

2018年(平成30年)10月26日
第二東京弁護士会会長 笠井 直人
18(声)第12号

 一部メディアは、1988年11月から1989年1月の間に発生したいわゆる女子高生コンクリート詰め殺人事件(以下「本事件」という。)について、当時少年であった被告人(以下「元少年」という。)が別の事件で逮捕されたことをきっかけに、本事件の詳細を挙げて被害者の実名及び顔写真を掲載するとともに元少年の実名及び顔写真を掲載した。
 少年法は、少年が成長途中の未成熟な存在であることに鑑み、「健全育成」すなわち少年の成長発達権保障の理念を掲げるとともに(1条)、同法61条は、少年の更生と社会復帰を阻害するおそれが大きいことを理由に、少年時の犯行について、氏名、年齢、職業、容ぼう等によりその者が当該事件の本人と推知することができるような記事又は写真の掲載を禁止している。
 少年法61条が保障する推知報道禁止は、成人後に少年時の事件報道がされるとなれば、少年の社会復帰の意欲を減殺し更生を阻害することになるため、少年の成長発達権を保障する少年法の理念に照らし当該少年が成人に達した後にも及ぶものである。
 成人の事件についての実名報道は禁止されていないが、これに関連づけようとも、今回のように、むしろ少年時の具体的事件に焦点を当てて詳細に報じる場合には、少年法61条を遵守すべきは当然である。
 成人後の事件と少年時の事件が同種である場合などであれば、その犯行態様を比較し、矯正教育の検証を含めて報道する意味があり、結果的に少年時の事件についても本人が特定されることとなってもやむを得ないとの意見もありうる。しかし、今回の記事内容は、いずれもセンセーショナルな報道をすることで読者の私的好奇心をかきたてるために、元少年の実名および顔写真を掲載していると言わざるを得ない。 しかも、本事件が発生した約30年前から現在に至るまで、少年法は、4度改正され、2014年改正では、有期刑の上限を5年引き上げる改正もされているが、いずれの報道も、それらを考察した形跡もなく、ただ少年法を批判している。
 加えて、さらに一部のメディアは、少年時の事件における被害者の実名と顔写真についても犯行状況の詳しい描写と共に掲載しているが、約30年前の事件についてこのような報道を行う必要性は乏しく、被害者の尊厳を著しく傷つけるものと言わざるを得ない。 各報道機関における被害者の尊厳及びプライバシーに対する配慮が進んでいる一方で、なお一部報道機関において被害者の尊厳が軽視され、今回のような事態が繰り返されたことは誠に遺憾である。
 当会は、これまでも、少年の実名及び顔写真を掲載した報道並びに犯罪被害者のプライバシーを侵害する報道がなされた際に、これらに抗議する会長声明を公表した。それにもかかわらず、同種の報道が繰り返されていることは遺憾であり、重ねて抗議する。

少年時の犯罪についての実名・顔写真報道及び被害者の実名・顔写真報道を受けての会長声明(PDF)

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