春季ジュニアロースクール・イベントレポート

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更新日:2019年05月13日

1 はじめに

法教育の普及・推進に関する委員会(法教育委員会)は、平成31年3月29日、弁護士会館において高校生を対象とする「2018年度ジュニアロースクール」を開催しました。
ジュニアロースクールは、法教育委員会が普段行っている出前授業と同様、子ども達に法的なものの見方・考え方を身につけてもらうことを目的とするアクティブ・ラーニング型の授業です。これまで、法教育委員会では、小学生、中学生を対象にジュニアロースクールを開催してきました(詳細は[Niben Frontier2018年11月号/2018年度イベントレポート]参照)。今回は、対象を高校生とした初めての試みです。高校生に身近な話題ということで、「高等教育無償化」をテーマとして模擬立法を行いました。

2 授業の内容

(1)立法に向けた準備

前半の講義パートでは、模擬立法の基礎となる考え方を学びました。
まず、法律は日々の生活に密接に関わっているものであり、身の回りには、法律だけでなく数多くの法(ルール)があり私たちの生活を支えていることを、様々な例を用いて説明しました。
次に、犬のロッポー君にまつわる身近な事例問題を出題し、解決手段を考えるなかで、問題解決のツールとしての法(ルール)の重要性、法(ルール)を作るために議論する重要性、事実に基づく説得力のある主張を行う重要性などを実感してもらいました。ここでは、子ども達に解決案をいくつか発表してもらいましたが、子どもならではの柔軟な発想に基づく回答が続出し、委員はもちろん、ゲストとしてお越しいただいた現役衆議院議員の方も舌を巻くほどでした。
続いて、今回の模擬立法のテーマである「高等教育無償化」に視点を移します。まずは制度の概要のみを伝え、「高等教育無償化」は本当に必要なのかを考えてもらい、発表してもらいました。そのうえで、いくつか資料を見てもらい、背景にある社会的課題や周辺事実について、自ら「発見」してもらう作業を行ってもらいました。事実に基づく主張を行うには、事実を「発見」することが不可欠ですが、その作業自体が意外に難しいものです。慣れない表やグラフの読み取りに苦戦しながらも、それぞれからどのような事実が窺えるのか、真剣な表情で考えていた子ども達の姿が印象的でした。

(2)いざ立法へ

模擬立法パートの後半では、子ども達6~7人でランダムに構成した班ごとに立法案を考えてもらいました。その後、班ごとに選出された発表者が自班の案をそれぞれ発表し、これに対し子ども達全員で投票をして、ベスト立法を決めます。立法にあたっては、「何となく」ではなく、資料から読み取れる「事実」を根拠とすることをルールとし、発表時には、根拠となった資料やそこから読み取れた「事実」を紹介することも課題としました。また、議会における立法の場合と同様に、各班の発表後には質問時間を設け、子ども達から他班に対し、他班の立法案へ疑問をぶつける時間も設けることとしました。
今回のテーマのような給付立法においては、財源の確保が不可欠ですが、この点まで考えると問題が複雑化し過ぎてしまう恐れがあります。一方で考える枠組みを決めすぎると自由な発想を阻害しかねません。論点の選定・整理と発想の自由度を確保するバランスは、法教育教材の作成過程で常に悩ましいところであり、準備期間ではいろいろな議論がなされました。最終的に、今回の模擬立法では、次の三つの点を考慮して法を立案してもらうこととしました。①無償化(あるいは補助)する対象は、全世帯か、所得に応じて対象を限定するか、②選択した世帯に対しては、全て無償化するか、段階的に補助金を定める(あるいは無償化する)か、③補助金の財源はどのように確保するか、です。まずは感覚的に上記①②を考えてもらい、そのうえで③の視点を提供してさらに再検討してもらう、という形に落ち着きました。
しかし、当日を迎えてみると、子ども達の中には、①②を考える過程で既に③の視点が必要なことに気付いている者も少なくなく、「理想としては●●を対象に△△程度の補助を与えた方がよいが、そうするとお金がかかり過ぎて現実的ではないのではないか。」といった意見が出るほどで、複雑になりすぎるのではないかという委員の懸念は杞憂に終わりました。③の視点を提供するとさらに議論は活性化しました。子ども達からは、「財源としては■■から××円調達するのがベストだと思う。」と、与えた選択肢以外の財源を用いる可能性が示唆される場面や、「○○の資料が見たいのですが、ありませんか。」と、配布した資料以外の資料も見てみたいとの要望がなされるなど、その視野の広さは委員の予想をはるかに上回るものでした。
発表では、各班とも特色ある立法案を堂々と発表しており、一つとして同じ立法案はありませんでした。「高等教育無償化」の背景にある少子高齢化という根本的な問題に目を向けて立法した班や、一般的に平等負担とされる税金を財源としつつも工夫して低所得者に配慮して立法した班など、高校生ならではの発想の柔軟さを遺憾なく発揮してもらえたようでした。

3 おわりに

今回は一日がかりということで、昼食時やプログラム終了後に弁護士への質問や歓談の時間も設けましたが、これも大いに盛り上がり、弁護士が外に出て子ども達と触れ合うこと自体の意義も再認識できた機会となりました。
法教育委員会は、今回参加した子ども達が、随所に発揮した柔軟性を失うことなく、他方で今回の体験で身につけた法的なものの見方・考え方を日々の生活に応用していくことで、柔軟な発想と論理的な思考力を身につけた大人に育っていくことを願っています。

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