会長声明

2004/01/05

裁判員制度に関する会長声明

2004年(平成16年)1月5日
第二東京弁護士会  会 長 尾 崎 純 理

  1.  裁判員制度に関し政府は、本年の通常国会への法案提出を目指して、司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」における制度設計の議論を終えようとしている。他方、政党においても同制度の設計案が提示され、与党である自民党と公明党において意見調整が現在行われている。
  2.  この重要な時期に改めて確認しておくべきことは、裁判員制度の設計は、あくまでも司法制度改革審議会意見(以下「審議会意見」という)にしたがって行われなければならない、ということである。
     審議会意見は、21世紀のわが国社会において、「統治主体・権利主体である国民が、司法の運営に主体的・有意的に参加」することを国民の役割とし、「国民主権に基づく統治構造の一翼を担う司法の分野においても、国民が、自律性と責任感を持ちつつ」、「国民のための司法を国民自らが実現し支えていくことが求められる」として、裁判員制度を提言した。
     したがって、裁判員制度の基本理念は国民主権であり、その制度は、国民の自治・自律の精神が活かされるものでなければならない。
  3.  その意味で、昨年10月28日に発表された「裁判員制度・刑事検討会」の井上正仁座長試案及び12月16日に発表された自由民主党案には、審議会意見が強調した国民主権の理念が希薄であり、従来の刑事裁判制度の延長線上に制度の設計を行っていると言わざるを得ない。
  4.  審議会意見の理念にしたがえば、国民が参加しやすく、分かりやすく、参加の意義を実感できる制度とすることが重要であり、制度設計を行うために特に留意すべき点は以下の点である。
    (1)裁判体の構成
    裁判官は2人以下とし、裁判員は6人以上とする。
    (2)分かりやすい証拠調べ
    証拠調べは証人を中心とし、供述調書作成過程が争点になった場合、立証方法はビデオ再生の方法による。
    (3)裁判員の職務を終えた者の守秘義務
    裁判員の任務を終えた者の守秘義務の範囲は、評議における個々人の意見、職務上知り得た他人の秘密に限定し、その違反に対する罰則も罰金刑のみとする。
  5.  また裁判員制度導入に当たっては、被告人の防御権に配慮した刑事司法手続きの抜本的改革が不可欠であることを改めて強調しておきたい。 政府及び与党は、審議会意見の理念に今一度立ち返り、国民主権の視点から、真に国民が主体的・実質的に参加できる裁判員制度の設計に取り組むべきであり、当会はその実現に向け、全力を傾ける所存である。

もどる