会長声明

2005/04/08

憲法改正国民投票法案についての会長声明

2005年(平成17年)4月8日
第二東京弁護士会 会長 高木 佳子

 近時、憲法改正論議が高まり、与党は、今国会において、憲法を改正する場合の手続きとなるべき国民投票法案を上程すべく検討していると報道されています。現在判明している同法案には、投票方法、投票日までの周知・考慮期間のあり方、有効投票のあり方、投票権者の範囲、無効訴訟のあり方など様々な問題点があります。とりわけ同法案には、国民主権の前提となるべき表現の自由の機能を無視するのみならず、不当に侵害する点で、看過し得ない重大な欠陥が存在しています。

 同法案は、国民主権を実効あらしめるための表現の自由の重要性を考慮することなく、憲法改正案に関する評論、あるいは意見表明の自由や、憲法改正に賛成又は反対の投票を目的とする運動を罰則付きで広範に規制しようとしています。例えば、(1)新聞・雑誌に評論を掲載することの制限(70条3項)(2)意見広告の禁止(70条1項・2項)(3)予想投票の公表の禁止(68条)(4)外国人の国民投票運動の禁止(66条)などがそれにあたります。

 表現の自由は、憲法の中でも、国民主権・民主主義を実現するための根幹をなす重要な権利・自由です。その理由は、国民が国政に関して自由な意思決定を行うためには、様々な意見や情報に触れる機会が保障され、自由な意見交換が保障されている必要があるからです。殊に、憲法改正手続においては、主権者である国民が、改正に関する多様で十分な情報、政治的意見や議論に可能な限り触れ、そのうえで、自由な意思決定が出来るようにしてこそ、国民主権の発現とされる憲法制定権の行使が可能となるのです。憲法そのものの正当性の根拠が国民の意思にあると言えるためには、改正に関する表現の自由が強く保障されなければなりません。

 国の在り方を規定する最高法規としての憲法の改正に関して国民に判断を問うにあたり、罰則付きで言論を封じ、改正に関する表現の自由を制約しようとする同法案は、憲法改正を国民の自由意思による判断に委ねようとした憲法の趣旨を没却するものと言わざるを得ません。民主政治の基本理念は、多様な意見表明がなされ、その中から国民が望ましいと考える意見を選択し、その結果、多数意思ないし国の意思が決定されるところにあり、その過程を維持することが根幹をなしていることを忘れてはなりません。

 よって、当会は、現在検討されている国民投票法案の上程を直ちに取りやめ、その抜本的見直しを強く求めるものです。

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