総会決議

2006/05/30

弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の立法化に絶対反対する総会決議

2006年(平成18年)5月30日
第二東京弁護士会

 政府は、弁護士に対し、不動産の売買、資産の管理等一定の取引について依頼者の行う「疑わしい取引」を警察庁に通報する義務と、通報の事実を依頼者に秘匿する義務を課す立法を行うべく、現在、2007(平成19)年の通常国会への法案上程を目指し、立法作業を進めている。

 弁護士は、依頼者の基本的人権と正当な法的利益を擁護することを職責とする法律専門家である。この職責を全うするためには、依頼者の全面的な信頼の下に、秘密事項を含め全ての事実の開示を受けたうえで、依頼者にとって最善の方策を立案し遂行しなければならない。弁護士の守秘義務は、依頼者が、有利不利を問わずあらゆる事実を安心して弁護士に明かすことを保障する制度であり、弁護士の職務の適正な遂行のために不可欠である。また、弁護士は、政府機関から独立しその監督を受けないものとされ、同時に弁護士会にも高度の自治が認められているが、このことは、人権擁護のためには国家権力と対峙する必要も生じることからも不可欠である。

 しかしながら、この立法により、警察庁への密告義務が弁護士に課されることになれば、弁護士制度の根幹である弁護士の守秘義務と政府機関からの独立がゆるがされることになり、もはや市民の弁護士への全面的な信頼は成立しなくなってしまう。市民が、弁護士に安心して秘密を打ち明け、適切な法的助言を受けることができなくなれば、市民の司法へのアクセスは阻害され、市民の法的利益も守られなくなる。その結果、弁護士制度の存在意義は危うくなり、民主的な司法制度の根幹が揺らぐこととなってしまう。

 当会は、弁護士が依頼者を警察に密告する制度を決して容認することはできないことを重ねて明らかにし、全会員が一丸となって、この立法を阻止する運動を更に強力に押し進めることを決意する。
 以上のとおり決議する。

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