会長声明

2006/09/22

自由な言論や報道を封じ込める暴力に断固抗議する会長声明

2006年(平成18年)9月22日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 去る8月15日、山形県鶴岡市にある加藤紘一衆議院議員の実家と事務所が放火により全焼するという事件が発生し、9月19日、右翼団体の構成員であった被疑者が現住建造物放火罪と住居侵入罪で山形地裁に起訴された。現時点では未だ解明されていない点が残されているが、報道によれば、被疑者は、加藤議員が小泉首相の靖国神社参拝について反対意見を表明していたことに強い不満を抱いており、これが放火に至る動機の一つであると考えられる。
 靖国神社への首相参拝を巡っては、たとえば、昨年1月に参拝に反対する発言をした財界関係者の自宅に火炎瓶が置かれ、実弾も郵送される事件が発生し、また、本年7月にも、昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示す発言をしていたとされるメモをスクープした新聞社に対して火炎瓶が投げられるなどの事件が発生している。また、そのほかにも、本年1月に、暴力団幹部の記事を書いたフリーライターの長男が暴力団関係者に刺される事件が起きたことも記憶に新しいところである。

 これらの事件に共通するのは、いずれも、自己の意見に反対する言論を、暴力によって封じ込めようとする点である。
 言論の自由は、憲法が保障するもっとも重要な基本的人権のひとつであり、民主主義社会を支える不可欠の基盤をなすものである。
 私たちは、民主主義社会を根底から否定するこのような暴力行為に断固として抗議する。

 言論を封殺するための暴力行為は、目に見えない形で言論の自由を萎縮させる効果をもたらす。社会や政治に対する批判的な発言や報道をすることが、自己に何らかの不利益をもたらすのではないかという漠然たる不安が言論の自由を萎縮させていないか、常に監視し、自問自答する必要がある。私たちは、市民の知る権利を実現すべきマス・メディアが、かかる暴力行為にひるむことなく、自由に意見を表明できる社会を確立・発展させるために一層の努力を尽くすよう、期待する。

 同時に、私たち弁護士会も、憲法上の権利を守り、発展させることをその使命とする法律家団体として、いかなる意見も自由に表明できる民主主義社会の大切さを広く訴えるとともに、自由な言論や報道を萎縮させるあらゆる暴力行為を許さない社会を創るため、市民とともに全力を尽くす決意であることを表明する。

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