会長声明

2006/09/27

「日の丸・君が代」強制予防訴訟東京地裁判決を支持する会長声明

2006年(平成18年)9月27日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 去る9月21日、東京地方裁判所は、都立学校の教職員らが、東京都及び東京都教育委員会(都教委)に対して、国歌斉唱義務不存在確認等を求めた訴訟(「日の丸・君が代」強制予防訴訟)において、原告らの訴えを全面的に認め、(1)原告ら都立学校の教職員らに、入学式・卒業式等における国歌斉唱の際に、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務、ピアノ伴奏をする義務がないことを確認し、(2)不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由にいかなる不利益処分もしてはならないとし、(3)原告らの被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡した。

 本件は、都教委が、2003年10月23日付で、都立学校の教職員に対し、入学式・卒業式などにおいて国旗に向かって起立し国歌を斉唱すべきこと、ピアノ伴奏をすべきことなどをはじめとする詳細な事項を、校長の職務命令を通じて命じ、かかる職務命令に従わない教職員は服務上の責任を問われることを周知すべきことを通達した(10・23通達)ことに起因する。その後、10・23通達及びこれに関する一連の指導等に基づき、東京都では現在までに延べ345名にものぼる教職員が懲戒処分を受け、さらに懲戒処分を受けた者には強制的に研修が命じられ、定年後の再雇用を拒否されるなど、行政による教育現場への介入が続いている。
 当会は、2004年2月18日付で、公立学校長に対し、入学式・卒業式等における国歌のピアノ伴奏を強制しないよう勧告を行い、さらに2005年2月28日には、都教委に対して、10・23通達を廃止すること、都立学校の卒業式・入学式において教職員・児童生徒に国旗への起立・国歌斉唱を強制しないこと、教職員・児童生徒の不起立・不斉唱を理由として教職員に不利益処分を科さないことを強く求める会長声明を発してきた。

 今回の判決は、都教委による10・23通達と、それに関する一連の指導等が「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しい」と指摘し、教育基本法10条1項が禁ずる「不当な支配」に該当して違法であり、憲法19条の思想・良心の自由を侵害するものであることを明確に判示した。
 およそ思想・良心の自由は、個人の精神活動のうち最も根元的な自由であり、憲法19条は、その根元的自由を外部の干渉介入から守るために絶対的に保障している。そして教育基本法10条は、戦前の教育における過度の国家的介入と統制を反省し、「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」(第1項)と定め、公権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならないとする憲法上の要請を担保している。
 当会は、今回の判決が憲法と教育基本法とを忠実に解釈・適用したものであり、当会が従来から都教委などに対し繰り返し求めてきた内容と合致するものであって、これを高く評価するものである。

 当会は、東京都及び都教委が本判決を真摯に受け止め、(1)直ちに10・23通達を撤回すること、(2)今後、都立学校の入学式・卒業式等において、教職員・児童生徒に対し国旗への起立・国歌斉唱・ピアノ伴奏等を強制しないこと、(3)今後、教職員・児童生徒の不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由として教職員に不利益処分を科さないこと、(4)10・23通達に基づいてなされた教職員に対する不利益処分を取り消すことを強く求めるものである。

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