会長声明

2006/09/28

死刑執行停止法の早期制定を求める会長声明

2006年(平成18年)9月28日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

 今月26日、杉浦正健前法務大臣は、任期中に死刑の執行をせず、内閣総辞職に伴って退任した。当会は、法務大臣が死刑の執行をしなかったことを、高く評価する。

 我が国においては、1993年(平成5年)に当時の法務大臣が死刑の執行を復活させ、以来毎年死刑が執行されてきた。しかし、世界の死刑制度をめぐる状況を見れば、1989年に国連において国際人権規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択された後、死刑廃止国は着実に増加し、1990年には死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国だったものが、2006年6月現在では、死刑存置国71か国、死刑廃止国が事実上の死刑廃止を含めて125か国となっており、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。

 他方、我が国に目を転じると、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)における再審無罪にみられるとおり、死刑判決にも誤判が存在することが明らかとなっている。昨年4月5日には、名張毒ぶどう酒事件の再審開始が決定し、同事件についての死刑執行は法的に停止されている。にもかかわらず、死刑事件について誤判が生じた制度上、運用上の問題点の解明も、誤判防止のための制度改革も、いまだ十分になされていない。誤判を防止する抜本的な改善がなされない限り、少なくとも死刑の執行をすべきではない。

 日本弁護士連合会は、2004年(平成16年)10月の人権擁護大会において、日本政府および国会に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定すること、衆参両院に死刑制度に関する調査会を設置すること、等を求める決議を採択した。当会も、死刑が執行されるつど、法務大臣に対して死刑執行の停止を求めてきたものであり、杉浦正健前法務大臣が死刑の執行をしなかったことを高く評価する。同時に、これを一人の法務大臣の信念の問題にとどめることなく、国民が裁判に参加する裁判員制度が2009年(平成21年)には実施されるという状況を踏まえ、日本政府と国会が、早急に死刑執行停止法を制定し、死刑制度の見直しに着手することを強く求めるものである。

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