死刑執行の停止についての要請

2006/12/15

死刑執行の停止についての要請

法務大臣 長勢甚遠 殿

2006年(平成18年)12月15日
第二東京弁護士会 会長 飯田 隆

第1 要請の趣旨
死刑確定者96名(2006年11月23日現在)に対し、死刑を執行されないよう要請する。

第2 要請の理由
1 当会は、本年9月28日、「死刑執行停止法の早期制定を求める会長声明」 を発し、杉浦正健前法務大臣が死刑の執行をしなかったことを高く評価する とともに、これを一人の法務大臣の信念の問題にとどめることなく、裁判員制度が2009年(平成21年)から実施される状況を踏まえ、日本政府と国会が早急に死刑執行停止法を制定し、死刑制度の見直しに着手することを強く求めたところである。

2 わが国では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなった。また、昨年4月5日には、名張毒ぶどう酒事件について再審開始決定がなされ、法的に死刑の執行が停止されるに至っている。しかしながら、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善が図られておらず、誤判の危険性は依然不可避である。また、死刑と無期の量刑につき、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出され、死刑についての明確な基準が存在しないことも明らかとなっている。

3 また世界に目を転じると、1989年に国連で国際人権(自由権)規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択された後、多くの国で死刑が廃止されている。1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。以下同じ。)に対し、2006年11 月21日現在、死刑存置国68か国、死刑廃止国129か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっている。

4 このような国際的な潮流と国内的な状況の乖離は問題であるとの認識に立ち、日本弁護士連合会は、2004年(平成16年)10月の人権擁護大会において、日本政府および国会に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定することを求める決議を採択した。当会も、この決議を踏まえて、死刑が執行されるつど、法務大臣に対して死刑執行の停止を求め、さらに冒頭の会長声明を発し、死刑執行停止法の早期制定を求めてきたものである。

5 しかし、誠に遺憾なことに、これまで死刑は繰り返し執行されてきた。特にこれまでの死刑の執行は、国会閉会直後や国政選挙直前あるいは年末など、国会が開催されておらず、国民の関心が他に向けられやすい時期に行われている。

 このような状況を踏まえ、当会は、法務大臣に対し、死刑確定者96名 (2006年11月23日現在)に死刑を執行されないよう、強く要請するものである。

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