会長声明

2007/04/16

「日本国憲法の改正手続に関する法律案」の参議院での慎重審議と最低投票率の導入を求める会長声明

2007年(平成19年)4月16日
第二東京弁護士会 会長 吉成 昌之

 自民党・公明党の与党は、日本国憲法の改正手続に関する法律案(以下「与党修正案」という。)について、2007年4月12日、衆議院の日本国憲法に関する調査特別委員会において与党単独で採決を強行し、さらに、翌13日に衆議院本会議でも与党単独で採決を強行した。
 当会は、昨年の5月31日付けで、「憲法改正国民投票法案に反対する会長声明」を公表し、同年9月7日には、「憲法改正国民投票法案に関する与党案・民主党案についての意見書」(以下「意見書」という)を公表し、最低投票率ないしは最低得票数の定めの導入、無効訴訟の要件緩和等を求めてきた。しかし、これらの点についての議論はほとんどなされなかった。
 憲法改正手続は、国家の根本規範の変更手続きであるから、国民の主権が行使される最も重要な機会である。したがって、その改正手続法は、国民の意思を十分に反映することができかつ国民の多数が賛成してはじめて改正の効力が生ずるよう定めることが必要である。
 当会は、前記意見書でも述べたとおり、憲法改正を決定する最終の権限を国民に与え、発議の要件を厳格にした憲法96条の趣旨からすれば、同条にいう「国民」の「承認」とは、多数の国民の積極的な改正意見があると評価できる程度の賛成があることをいうものと考える。与党修正案も民主党修正案も、投票率によっては、有権者のきわめてわずかの割合の賛成でも「国民」の「承認」があることになりかねず、国民主権の観点からも、また硬性憲法としての憲法の特性からも極めて問題である。憲法改正のための国民投票には、最低投票率または最低得票数についての規定を設けることが必須である。
 さらに、与党修正案には、公務員・教育者の国民投票運動の制限やテレビ等の有料意見広告の制限、関連条文の一括投票など、国民の意見形成に関するきわめて重要な問題が含まれており、これらいずれの点についても、広く国民の意見を聴取した上で、慎重な審議がなされることが必要である。
 当会は、十分な審議を尽くさずになされた衆議院での採決強行に遺憾の意を表するとともに、参議院の審議においては、当会の求める最低投票率導入等について十分に審議をし、かつ憲法改正手続法の重要性に鑑み、相当数の都道府県において適切な周知期間をもって公聴会を開催し国民の意見を聴取して、広く国民の間で合意の得られるよう丁寧な議論がなされることを強く求めるものである。

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